2015年07月26日

フィン最南端の街は、物と人の門出の街

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実はよく私の日記の、ガイドブックにはのらないマイナー地方都市のレポートが楽しみです、どんどんお願いします、という声を頂戴しています。確かにふと右サイドバーのカテゴリーリストを見れば、無自覚に結構いろんな地域の街の名前が溜まってきている!取材で訪れた街もあれば、プライベートで足を運んだ街も。地方都市に強いですよ〜と豪語する在住ライターとして、国内の街コンプリートは不可能にせよ、確かにこれは今後もちまちまと増やし続けていければオリエンテーリングみたいで良い記録になるなあと思ったので、先週私自身が初めて来訪した街のレポートを新たに書き記しておきます。

先週末は、一年ぶりにミッコのブラジリアン柔術の試合観戦…という良妻アピール度の高い大義名分のもと、柔術チームの皆さんの車の空席に乗せていただき、フィンランド最南端の街ハンコ(Hanko)へ。ヘルシンキからなら車で西方面に2時間弱、ユヴァスキュラからだと4時間あまりの長旅でした。最南端なのでもちろんバルト海に面しており、気候も多少温暖で晴れる日が多いので、いわゆる夏のリゾート街だよとは聞いていたのですが…

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天気の良い週末なのにビーチ空っぽですけど!!
まあ確かに海に飛び込みたくなるほど暖かい日でもなかったのですけど、街全体が予想外に閑散としている印象でした。今回時間がなくていけなかったんですが、少し車で行ったところに魅惑のヌーディストビーチがあるらしいので、ひょっとしたら皆そこに集中しているのかも?

ちなみにこの辺りの南岸エリアはスウェーデン話者が優勢の街が多く、ハンコの場合は街を歩いていた感じでは半々くらいなのかな?という印象。もちろん首都圏のフィンランド人からの観光客が多いはずなので地元民か否かを見分けるのは難しいのですが、ローカルなお店に行って店員さん同士やお客さんとの会話を聞いているとどちらも一定数居るのだろう…と推測されます。看板も、場所や店によってフィンランド語が先に来ているところもあれば、スウェーデン語が上の場所もあり、という可逆的な雰囲気。

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ハンコの中心街のおよそどこからでも臨むことのできる、教会と同じ丘の上にそびえ立つ朱色のロケットのような構築物は、なんと給水塔。戦時中の1943年に築かれたもので、設計者は、ロヴァニエミとか、私の身近なところではセイナッツァロなど、国内各地の教会建築の設計で知られている Bertel Liljequist氏。彼の教会建築は、わりと正統派な古典主義の印象が強いのですが、そんななかでこの給水塔は色も出で立ちも一種独特なインパクト。先っぽにさり気なく魚(くじら?)のレリーフが刺さっているのがおちゃめです。
この給水塔にかぎらず、フィンランドの各街には、よくお客さんからも「あの宇宙基地みたいな建物は何ですか?」と尋ねられるインパクトの強い給水塔が多いです。このハンコの給水塔やエスポーのアールト設計のものみたいに著名な建築家がデザインしている物も少なくないのですが、そうでなくでもかなりユーモラスなかたちをしていて、モノリス状のものに萌えやすい私は、よその街に行くとその街の給水塔デザインをチェックするのが密かな楽しみになっているほどです。
そもそも私、日本では給水塔という構築物に関心を持ったことすらなく、今改めて画像検索してみたら、日本にもなかなか強烈なデザインのものが多いじゃないですか!そしてやはりというか、一部のマニアたちが全国給水塔ツアーを楽しんだりしてるみたいです。ピンと来ない人はぜひ日本語の「給水塔」そしてフィン語の「vesitorni」で画像検索をお楽しみください!

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移動図書館はユヴァスキュラでもよく見かけるけど、移動スーパーは初めて見た!高齢者の多い街では喜ばれそう。

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すぐそばで見ると老朽化が激しすぎて大丈夫かと思ってしまうけど(すぐ先が海で潮にやられるのか?)、通りを隔てて眺めると、なんとも趣深いテクスチャに見えて魅力的にさえ思えた建物。

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こちらは浜辺で見かけた、希望と哀愁のどちらもを背負って海に飛び立つ白鳥たちのモニュメントで、1800年代後半から1930年頃までにかけて、フィンランドからアメリカへと渡った移民たちの記念碑なのだそう。この期間に、実に40万人のフィンランド人が新天地を求めてアメリカに向かい、そのうち半分以上の人が、このハンコの港からまずイギリスに渡り、そこからアメリカを目指す…というルートをとったのだそうです。
北欧の人たちのアメリカ移住ブームは、主にプロテスタント・ルーテル派を信仰する人たちが宗教的な自由の地に憧れて…というのが理由だと書かれていましたが、特にフィンランドからの場合、ロシアの圧制下での生活に希望が見いだせず、自由の国と謳われる新世界で人生をリセットさせられたら…という思惑があった人も少なくなかったのではと察してしまいます。
それにしても、40万人とはすごい数!今のヘルシンキ市の人口の70%以上に匹敵する数ですもんねえ。北欧からの移民の多くは現在ミネソタ州に定住しているとよく聞きますね。景観もよく似ていて暮らしやすいのだとか。

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最南端の街から海原に出て行った(出て行く)のは移民だけではなく、もちろんこの街の港は、今も昔も海上の物流拠点として大きな役割を果たしており、写真はないのですが、漁船やクルーズ船だけでなく別の港から大型運送船がターミナルを行き来していたし、列車のハンコ駅の先にもまだしばらく貨物列車ように鉄道が伸びていて、たどってみるとまさに貨物港まで敷かれていました。ハンコはもちろん南方のさわやかなリゾートの街、という一面は間違いないし、海辺の一戸建ては自宅にせよ別荘にせよハイソ感がぷんぷん漂っていましたが、いっぽうで街のふとしたところで目につく、無骨で古びた建物や港湾施設の数々は、華やかさとは無縁の、モノが行き交う湊の風格をお漂わせています。高校時代を神戸の浜側で過ごした私にはなんとなく、ここは須磨海岸ではなく和田岬…という印象を持ちました。そもそも上のハンコ駅の駅舎も、曲がりなりにも在来線の終着駅でありながら、リゾートの期待膨らむ客人を歓迎する気ゼロのこの無愛想さっすからね。。

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と、ハンコ紹介だけではまさに本末転倒なので、一応試合観戦記も…笑
今回は決して大きな大会ではなかったんですが、白帯以外の選手の混合オープン戦で、ミッコは初戦で国内ランク3位の超強豪にあたってしまう不運さ(対戦相手は前日に発表されます)。前回私が観に行ったときも最初の相手はその後の世界選手権で同色帯同重量級の世界チャンピオンになった猛者だったし、もしかして、珍しく私が見に来るとクジ運悪くなっちゃうジンクスの予感…!?
ともあれ、いざ挑んた対戦では、相手との力量差を考えればずいぶん健闘していました。優勢に立つことはなかったけど、かなり防衛で粘っていて、結局最後の最後で絞められちゃったけど、本人も受け身の手応えはかなりあったと、負けたとはいえわりと晴れやかな様子。実際その相手は、その先もまだ4試合くらい勝ち上がって難なく優勝しており、他の対戦相手はものの数秒でギブアップという人も少なくなかったし。彼の所属するタンペレのクラブの男子チームは、国内随一、どころかヨーロッパ随一のレベルとして名を馳せているのだそうで、実はその彼も、もともとユヴァスキュラのファイトクラブにいたけれど、柔術を極めたくてわざわざタンペレに引越して再就職もしたのだそう。そりゃあもうその時点で情熱勝ちですな。

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ユヴァスキュラチームは、宿泊地としてハンコから少し内海に入ったあたりにある、キリスト教学校の宿舎(こういう施設は夏場は空っぽなのでよくユースホステルになる)に泊まり込んでいました。眼の前がこのとおりの穏やかな海で(対岸に見えているのは群島)、夕日を浴びながらちょっと青春染みた時間を過ごしたり、深夜まで共同リビングルームでボードゲームやおしゃべりに明け暮れたりと、なんだか学生時代の合宿ムードを彷彿とさせる和やかさ。試合終了後の夜はもちろんバーで打ち上げ!だったのですが、私は急遽翌日に仕事でヘルシンキに行かなければならなくなり、泣く泣くノンアルコールでご飯だけ食べて宿舎に帰ってきて、荷物をまとめるはめに…しょんぼり。

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ということで翌朝はミッコに駅まで送り届けてもらって、しぶしぶ上京。実際はKarjaa駅で乗り換えがあって、そこまでの区間はミニ2両編成のザ・ローカル列車で、ガタゴトとしばし田舎旅。森を抜けたり海の上を走ったりと景色はそれなりに楽しめますが、間の停車駅にびっくり。駅舎はなく、待合ベンチだけがポツンと設置されたバス停以下の駅ばかりなのですよ。こうして東西本線(トゥルク・ヘルシンキ線)から途中ぴろっと別れて港にのびるひなびたローカル線…やっぱりハンコはフィンランドの和田岬やな(ローカルネタですみません…詳しくJR神戸線の和田岬線路線図を見てみてください)。

ayana@hanko.fi


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そういえば在フィン者にお馴染みのハンコ寿司の本店に行けなかったのがちょっぴり悔やまれる

posted by こばやし あやな at 18:02| Comment(0) | Hanko-ハンコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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