2014年08月06日

幸せの渦潮



本日無事に、5日間にわたる取材ロケがクランクアップ。いまこんなにも疲労困憊なのは、通訳やガイド役に集中したから以上に、連日あまりに天気が良すぎ気温も高いなか、撮影機材運びを手伝いながら動き続けたほうが響いている気がします。そもそも出発直前まで懸案事項が多すぎて悪い予感ばかりが心をうごめいていましたが、蓋を開けて飛び込んでみればまったく杞憂で、心底ホッとして気が抜けました。てろーん。

さて以下に書くことは、もともと不特定多数の人や特にお得意様が読むかもしれないブログという場で書くにはなんとなくためらわれ、フェイスブックの友人範囲にとどめて吐露した出来事と率直な思いです。でもそこに頂いたコメントから、今後自分が在フィンジャーナリスト・コーディネーターとして実直に活動を続けていくうえで、このロケ中に直面したこと、それに触れて感じ考えたことは、やはり決して忘れてはならないし、ビジネス最優先で今後ないがしろにしたり見てみぬふりしていくようではいけないと思いなおすことができました。なので、こばやしあやなという在住ジャーナリストの信念というか意思表明の意味で、以下にも同じ日記を書き残しておきたいと思います。

前回書いたように、先日まで、トーヴェヤンソン関連の取材でペッリンキ諸島の漁村に滞在していました。トーヴェのコテージや島の訪問はもちろん、生前の彼女にゆかりのある場所やとの交流の記憶をもつ島の人々を、現地での収集情報や証言を手がかりに半ば成り行き任せに探っていく日々。そしてタイミングよく訪問期間にやっていた、トーヴェと島民との類まれな交流の回顧がテーマとなった地元民たちによる手作り野外舞台も鑑賞。脚本家さんらが本番前の忙しい中アポ無しの取材にも快く応じて下さり、何より劇は、アマチュア離れした完成度とアマチュアらしい終演時の涙をにじませた表情、そして背景舞台となっていた海辺の景観の美しさが相まって涙がとまりませんでした。

取材中、この平和な漁村の島民たちにとって、近年とくに激化していたムーミンブームゆえの観光客やメディアの押し掛けが実のところいかに困惑の種であったか、そのリアルな思いを否応無しに幾度も汲み取ることとなりました。いうならば、トーヴェと島民との美しい交流史を、彼らは観光資源にしたいとは微塵も思っていないのです。なぜなら彼らにとってトーヴェは世界を股にかけた有名人、ではなく、あくまで一人の大切な親友だから。トーヴェ自身も、世界からの注目の眼差しに疲弊しては夏が来るたび大好きな海に囲まれた秘島にひっそりと身を寄せていたのだし、それを彼女が亡くなったとたん、後を絶えない訪問者を受け入れ、根掘り葉掘りエピソードを聞き出され、島に残る彼女の軌跡をまさに重箱の隅をつつく如く徹底的に掘り起こされるのは、まるでトーヴェの島ぐらし中のプライベートの流出に加担しているような気になるからと、島民の多くはこれまで積極的にトーヴェのことを語らずいたのだそうです。

けれど生誕100周年の今年、島民たちは一致団結してある新たな方向に舵をとることを決めました。

それは、村への観光客がいわずもがな激増する今夏、伝統の村民野外劇の題材にトーヴェとの交流史を選び、自分たちの目を通したトーヴェ像や自分たちとトーヴェとのありのままの関係や思いを、お芝居を通して外部にみずから発信しようというプロジェクト。そして、自分たちの記憶に残る等身大のトーヴェ像をメディアや来客に語ることを拒まない、という姿勢への転換です。それもまた島民たちなりのトーヴェへの変わらぬ愛情の、新しい形だと信じて。

だからこそ彼らは今回、本当に真摯に、あたたかく、誠実に、私たちメディアの鬱陶しいほどに突っ込んでいく取材に全面協力してくださいました。
そして抱えきれないほどの感謝の気持ちとともに、私はメディアの一端としての自分自身の申し訳無さで、なんども息苦しくなりました。

これまで、たとえば日本で旅本を作っていたころは、いわば我々編集サイドと取材先のお店との利害はほぼ常に一致していたものです。だからこそ、同じ書き物屋でもそのジャンルを選んだのだし、ゴシップ誌なんていう誰かを傷つけてでしかお金を儲けられないメディアの形もある中なんて自分は幸せな仕事をしてるんだと、当時は脳天気に浮かれていました。
でも今フィンランドでマルチにフリージャーナリストとしての活動を広げる中で、必ずしも自分の探究心(やクライアント様からの調査取材内容)がその取材対象さまの利潤や幸福に繋がらない…むしろ迷惑や困惑の種でしかない案件も、少なからず、確実にあるのが現実です。

結局引き受けてしまえば、仕事だからやらねばならぬ、は大原則。生計にだって響くし降ってくる案件すべてが確実に経験値をあげてくれる修行段階の今は、なにもえらそうなことは言ってられません。

それでも本心は、依頼主様と、取材対象様と、読者とが、みんなそれぞれに幸せになれるメディア(媒体)でありたいのです。本当に、ただそれだけが、私の幸せや生き甲斐の尺度と言っても過言ではありません。
その理想に対して、私自身はもっともっと、ゆるぎない信念やアプローチ方法やコミュニケーション技術を磨いて確立してゆかなければならないのでしょう。みんなが乗り気で精神的・現実的利潤を得られるプロジェクトに、もっと積極的に関わっていけるように。あるいは、みずから生み出していけるように。


ayana@pellinki.fi




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そろそろユヴァスキュラシック
posted by こばやし あやな at 00:02| Comment(0) | Pellinki−ペッリンキ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月01日

トーヴェの愛した島暮らしを当地で疑似体験



というわけで、取材コーディネートのお仕事で、トーヴェヤンソンが毎年夏に数ヶ月ヘルシンキからやって来て慎ましい島ぐらしを謳歌していた、ポルヴォーの南部の海に浮かぶペッリンゲ諸島にやって来ています。いつも載せている湖風景写真と見分けがつかないかもしれませんが、これはれっきとした海辺の夕暮れ。これから数日、こんなに素敵な海辺で地元の漁師さんによって営まれている民宿に身を寄せながら、トーヴェの夏の暮らしの軌跡を辿ってゆきます。

今日はまだ漁村の様子を見て回ることはできませんでしたが、寡黙な(でも自分でぼそっと発したジョークに自分でククっと笑ってるのがお茶目な)漁師さん自らが腕をふるってくださった、絶品のサーリストレイパ(漁師パン)と新鮮な魚スープをいただき、酒盛りで豪快に談笑する漁師さんたちとの会話に混ぜてもらったり、夕日が沈みきって紅色に染まった夜の海で少し泳いだりと、すでに島の日常を満喫中です。

やはり湖畔の暮らしとは匂いも音も人々の雰囲気も(そして言語も…彼らの第一言語はトーヴェと同じくスウェーデン語ですから!)違っておもしろい。明日からも、おもしろい発見や出会いがたくさんありそうな予感です。



ayana@pellinki.fi




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波音を聞きながら、おやすみなさい。
posted by こばやし あやな at 23:29| Comment(0) | Pellinki−ペッリンキ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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