2012年10月24日

熊と猟犬のたわむれ

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kuva:Lauri Jokela

上の写真はもちろん私が撮ったものではなく、昨日のケスキスオマライネン紙(中部フィンの新聞)にでかでかと掲載されて、ちょっとした話題を呼んだ写真であります。

「猟犬と熊の森散策」と見出しのついたその記事によると、ユヴァスキュラより少し西の街ケウルーの森で、猟犬とともにヘラジカ猟に出かけていたチームがふと物音に気づき、見ればなんと、ヘラジカではなく立派な体格のオス熊が目と鼻の先に姿を現したのだと。皆が震えあがり、死をも覚悟したその時…。本来ヘラジカの狩猟用に教育された猟犬が、果敢に熊の前へと出ていって、片時も休まず吠え続けながら、熊との追いかけっこを始めたんですって!!

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kuva:Lauri Jokela


この熊と犬との戯れはなんと4時間以上にも及んだそうで、その間に人間たちは一命を取り留め、さっそく熊出没警報がニュースが地元のラジオ速報で流れたそうな。すると今度は、たまたま近くの街にいた自然風景写真家のラウリさんが、なんとかその熊を写真に収めたい一心で、なんとカメラ片手に現場に急行。おお、いたいた!吠え続けるどころか、時に足に噛み付こうともしてくる犬に敵意を見せるようすもない、温和そうな熊の姿が…

結局ラウリさんは、危険を顧みずぎりぎりのところまで熊のいる場所に接近してシャッターを切り続け、そのうちの奇跡の写真が、一番上の、まさに自分の方に向かって「モイ!」と挨拶しているふうに見える、アニメションのように愛嬌たっぷりのショット!!

熊はその後、川を渡って対岸に行ってしまい、犬はそれをさらに追いかけることなく、ようやく二人…いや二匹…いや一匹と一頭のじゃれ合いはお開きになったのだそう。

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写真の熊さん、私のもっている木彫りの熊さんにそっくり(笑)機嫌がいいと、ほんとにこんなポーズするんやねえ。

そもそもこの熊は、雨続きで湿りきった森の奥から、自分の体を乾かしに(つまり、ひなたぼっこ?)人の利用する道のほうまで出てきたと見られているらしく、よく言われる話だけれどあからさまに敵意を持ったり子供を守ったりするようなシチュエーション以外は、わりに大人しいのです。

このニュースのことを最初に教えてくれたのは、昨日のカンテレ実習の先生。続けて、こんな面白い話も聞かせてくれました。フィンランドには、(前回少し書いたように)熊(Karhu)を最高神として崇め畏怖する文化と、同様にヘラジカ(Hirvi)を崇める文化に二分されるのだそう(以前私が奇跡的に森で遭遇したヘラジカの写真がこちらにあります。まさにもののけ姫のシシ神様を目の当たりにしているかのようだった…)。

特に熊は、たやすくその名前を口にするだけでも呪い殺されると恐れられており、「metsän kuningas(森の王)」のように、隠語的な呼び名がたくさん流布していたのだとか。とはいえ、いっぽうで熊もヘラジカも大事な狩猟の標的動物。だから彼らを仕留めにゆく前、無事に仕留めて肉を解体する前などは、一行とその村人たちでお祭りを開き、神への畏敬を十分に表現したあとで、その恵みを享受していたのだそうです。

先生はこの話のあと、じゃあ私たちもこの写真に写った熊さんに畏敬の念を込めて…とさらに粋な前置きをして、例の熊の祭りのポルカを最初にみんなで一曲弾き歌いました。

せっかくなので、改めて例の動画を貼っておきましょうか。



それからもうひとつ、熊がなついてしまったことで国内でも以前話題になった男性の衝撃映像。



実はコレ、少し前にご紹介したサウナドキュメント映画Miesten Vuoroの一部でして、彼のエピソードによると、ある日自分がサウナに入っていると、ドアの隙間を這うようにして、熊がサウナに入ってきてしまったらしいのです!!想像するだけで、恐ろしくも微笑ましい…(笑)

ayana@jyväskylä.fi


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posted by こばやし あやな at 23:32| Comment(0) | Suomi×信仰 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月27日

フィンランドの天の川伝説

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今日は、お昼前に「昨日のパーティの残り物でBBQやってるから降りておいで〜」と、昨日仲良くなった住人さんに窓の下から声をかけられ、まったり野外パーティの続編を楽しみました。いや本当に、温かな家庭ばかりのつくづく居心地のよい集会で、3ヶ月も住んでおきながら交流を避け続けていたことを激しく後悔しそうです。

さらにその後、3階のアンナ宅のキッチンにわらわらと皆再集合して、お約束通りお寿司講習会を開講!
私一人では心もとなかったので(というよりあのお嬢ちゃんたちをとても相手しきれないと察し…)、金曜日の日本人会ですぐご近所に住んでいることが発覚したショウゴさんにもヘルプ要請してお越しいただきました。

牛乳粥用のお米を使っての失敗しないご飯の炊き方を伝授したのち、大量に酢飯を作って巻き寿司と手まり寿司のいろはをレクチャー。クリエイティブ業に携わるだけあり皆さん腕もよく、まもなく食卓にはずらりと色鮮やかなお寿司が並びましたよ!タイミングよく次々に棟内の来客が食べに来て、完食もあっというまでした。


デザートのアイスクリームとコーヒーで一息ついた後、私が何気なく始めた紙ナプキンを使っての折り紙、切り紙制作がやがて蔓延し始めて、中でも私自身久々に取り組んだ「天の川」づくりが大はやり!初めはスタンダードに長方形からスタートし、やがて応用編のツリー形もママさんたちはあっという間に習得。今度はこれを布で作ってランプ装飾に利用する計画すら持ち上がっていました…さすがインテリアのアイデア捻出に余念のないフィン人!

かこつけて七夕伝説なども紹介してあげようとしたのですが、そういえば「天の川」のフィン語名自体を知らないぞ…と行き詰って逆に問いかけると、どうやらフィン語ではLinnunrata(リンヌンラタ/鳥の通り道)と呼ぶそうです。

鳥の通り道というのも、また可愛らしくて素敵な名前。きっと渡り鳥の行き来する方向かなにかを示しているのかな、というところまでは推測がつき、実際それは間違っていなかったのですが、帰宅して、もう一息理解を深めてみようかとウィキペディアなどで資料を読みこんでいたところ、そもそも次のような古代フィンランド人の宇宙観がベースになった呼び名であることがわかりました。


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(画像はwikipedia.fiの"Muinaissuomalaisten kaikkeuskäsitykset"項目より拝借しました)

古代フィンランド人は、当然ながら世界を「地球平面説」で捉えていて、円形の大地が丸天井の天空に覆われていると理解していました。

自分たちが住んでいる土地は、その円盤状の大地の中心に浮かぶひとつの島で、その周りを取り囲む途方も無い川(もちろん本当は海ですが)は死の国(トゥオネラ)へと続いています。つまり島の周りの川は、生死を分かつ三途の川みたいな存在のようです。

また、自分たちの住む陸地と天空は、いわゆる「世界軸」で結ばれていて、その軸の終着点が北極星。だから北極星は、一番の頂部でこの世界を束ねる「北の留め金」といった名前に言い換えられたりもします。これは北極星をほぼ真上に見上げることになる極北の地ならではの発想かもしれませんね。

半円球状の世界の「果て(大地と天空の接する淵)」は、ただ漠然とぐるり360度に認識されていただけでなく、「北の果て」「南の果て」というように、ちゃんと各方角とともに見定められていました。たとえば北の果てには、病や霜やその他不吉なことの一切をもたらす万年寒冷の国「Pohjola/ポホヨラ」があります。
そして南・南西の方角の果てには、lintukoto(リントゥコト/鳥の住処)と呼ばれる別の地があると考えられていました。そこは、半円球の隅っこだけに狭く窮屈な場所なので全てのスケールが小さくて、「リントゥコトの民」という小人族も住んでいます。

名前の由縁はやはり、毎年渡り鳥が目指しゆく地だから。そして、その鳥たちが渡る経路に添って天空に浮かぶ道筋こそが「天の川」つまり「鳥の通り道」である、というわけです。この通り道を通って、死者の魂もまた鳥の住処へと流れてゆくとも考えられていたようです。
ちなみに、実際に渡り鳥は天の川の経路にしたがって渡りを続けるということが、現代の科学でも裏付けられています。


フィンランドの例に限らず古代人の宇宙論って、知れば知るほどなんと惹き込まれることだろう。当人たちは生真面目だったとはいえ、あまりにファンタジックなアイデアの途方も無さはすべて、科学による裏付けを得た真実を知らないからこそ生まれた、人々の想像力のスケールそのもの。なんでも知りすぎている現代の賢者たちは、決してもうこんなふうに果てなき想像力を開放することはできないだろう。でもおかげで私たちは、宇宙には果てがない、という古代人の想像が及びもしなかった事実を知っているのだけど。

ayana@helsinki.fi


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さて、ヘルシンキ生活もラスト10日を切りました。




posted by こばやし あやな at 06:19| Comment(0) | Suomi×信仰 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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