2015年10月31日

文化と文化の境界のあいまいさ

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先々週は、住宅建築を扱う専門雑誌の取材コーディネートでヘルシンキとユヴァスキュラを往復。先週は、(私のお得意様でもある)夫の勤める会社のウェブコンテンツ最新作のため、エストニア南部のヴォルというエリアに住む、独自言語を喋る民族の生活文化の取材撮影にサポート帯同。修論初稿提出からまったく間を空けられずにこのダブル出張…という過密スケジュールだったので、今週はまた次なる任務や締切り迫るレポート課題に追われながらも、気分的にはすっかり腑抜けで、さすがに調子があがりませんでした…。今年も残すところあと2ヶ月。11月、12月はそれぞれ、これまで自己流でどうにかやって来たメディアコーディネート業の有難き集大成とも呼べる大仕事も入っていて、その合間に論文最終稿も提出せねばならないので、休めるときにはしっかり休んで、クリスマスまでもうひと頑張りですな。


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今日は、ここ最近のワーキングライフのなかでひしひしと感じていることを、少しばかり吐露してみたいと思います。

まずひとつめは、文化・民族性・言語といったものの、出どころや実態や境界の曖昧さ、一方でそれらと、「先に認知されたもの勝ち」な観光PR・イメージ戦略との間に介在する、ありのままの現実の捉え方の難しさです。実はエストニアの奥地をわざわざ訪ねたのは、昨年にエストニアのこの地方のサウナ文化が無形文化遺産として世界遺産に登録されたからでした。フィンランド人や、おそらく日本や世界の他の国々の人にとっても、「え、なぜにフィンランドを差し置いてエストニア!?」という思いを隠せないでしょう。多くの人がSaunaはフィンランド語だと信じているし、サウナこそフィンランドの独自文化だと、観光局もこれまでに大々的にPRしてきました。けれど、今回の取材や論文執筆をきっかけに私自身も(サウナ文化研究家として)いろいろそのルーツや語源や諸外国の様相について文献を紐解いたのですが、結論から言ってしまえば、やはりこの文化や言葉を「フィンランドのもの」として独り占めしてしまうのは非常に危険なことなのです。

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そもそも、フィンランド人やフィンランド語のルーツですら、未だに専門家たちの間でもコレというひとつの結論は出ていません。邪馬台国がどこにあったか…の議論と同じです。ただ言えるのは、フィンランド語は、フィン・ウラル語族というヨーロッパでは希少言語扱いされる言語ではあるけれど、バルト海沿岸の諸地域に存在する(した)、現在一国の国語となっていない希少言語や、話者がすでに居なくなってしなった絶滅言語のなかに、類似する言語や影響を受けた言語がかなりある、ということです。たとえばフィンランドの景色を象徴する「白樺」という単語「Koivu」すらも、実はもともと現在のラトビア付近で話されていた言語が元になった外来語なのだ、という記述を以前見かけました。そしてどうやら、Saunaもしかり、です。

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現在のエストニア全体の公用語はエストニア語で、これはフィンランド語の兄弟言語として知られていますが、実は今回訪れたヴォル地方では、エストニア語の方言…と言えなくもないけれど、単語や発音体系がかなり異なることから一般的にはひとつの別言語と見なされている「ヴォロ語(ヴォル語)」が主に話されています。
このヴォロ語、いざネイティブの会話を耳にしてびっくり、驚くほどリズムや口調がフィンランド語にそっくりなのです。けれど、何を言っているかは分かりそうでわからない。。まさに中川家の礼二の外国語コントを聞いているかのようです。ただ、実際にはフィンランド語に近い、あるいはほぼ同じ単語なども少なくなく、不思議なもので分からないなりに少しずつ相手の意図が汲み取れるようになってくるし、こちらがフィン語で話すほうが、英語よりもよっぽど推測がはたらくようで意思疎通がそれなりに可能になるのです。
例えば(タリンなどで話されている)エストニア語も、フィン語話者なら書き言葉を見れば理解や推測可能な単語やセンテンスもそれなりにありますが、話しているのを聞く限りでは韻やリズムはまた別物で、聞き取れるには至りません。なのになぜ、フィンランドに近いタリンの辺りよりもずっと南で、フィン語にこれほどまで通ずる言語が話されているのか…その訳の実証は不可能に近いだろうし、ましてどちらが「先」か、なんて議題がふっかけられたらそれこそ水掛け論になってしまいそうです。
言語だけでなく文化も同じで、現にサウナという行為や建物は古くからエストニアやラトビア、ロシアのほうにもあったし、フィンランドがその発祥だ、なんて根拠は実際どこにもありません。

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今回ヴォル族の人たちが、世界遺産登録への動きの中でとても大人で立派だったのは、サウナ文化の「ルーツ」や「建築的な様式のオリジナリティ」がここにある、と主張したのではなく、「サウナ文化のひとつのあり方」として、彼らの日常文化や信仰と結びついてこんな独自のサウナ文化が根付いているんですよ、という視点からアピールしたことです。これがもし、「うちの地域のサウナが最古だ/最も素晴らしい!」なんて主張していたら、それこそフィンランドとプライドを掛けた争いが勃発していたかもしれません。ただこのことは逆に、これまでのように有無を言わさず「サウナはフィンランドのもの!」とアピールすることの危うさに気づかせてくれます。
ヴォル族の皆さんとの交流以来、国や地域を問わず、私達の身の回りにあるあらゆる物事において、そのルーツや優位性の決めつけには危うさや虚しさが潜んでいる…という認識をするようになりました。そしていちジャーナリストとしても、この点は今後も常に意識しながら、フィンランドPRに勤しむがためにその本質や影の立役者をないがしろにしていないか…と気を配れるようにせねばと思います。

実は年末のお仕事に向けても一件、ちょうど同様に絶妙なとある文化のルーツに切り込む企画が進行していて、正直、本当の現実と求められているイメージとの落としごころを見つけるのに今まだ苦労をしているところです。さて、最終的にどんな形で実現となるか…楽しみでもあり、今はまだヒヤヒヤしています(笑)


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ふたつめは、全然そんな高尚な話でもなんでもないのですが、出会って気づけば4年になる我々夫婦間の、立場関係しかりコミュニケーション言語関係しかり、なんか急激にぐんぐん変わっていってるなあ…という懐古?と驚きです。4年前の今頃は私のフィン語もまだまだ使い物にならず、ミッコに至ってはほとんど日本語を喋りもしていなかったのに、言語交換指導や留学、勉学といった経験を経て、たくさんもどかしい思いをしながら、今じゃ互いに仕事でもプライベートでも互いの言語を使い、(フリーランサーか雇用されているかの違いはあれど)お客様なり企業なりメディアの間で、人をもてなしたりコミュニケーションを助けたり…といった同類の仕事を、それぞれフォローし合いながらこなしているのですから…誰よりも自分たちが一番驚きを隠せません(笑)この間のエストニア取材のように2人揃って必要としていただいたり、2人セットで贔屓にしていただいている企業や関係者というのも日本フィンランドそれぞれに少しずつ増えているこの現実は、さすがに数年前には想像だにしていませんでした…。
あとやはり仕事が絡んでくると、笑ってごまかしたり放棄できないシリアスな物事も当然増えてくるので、それを発端にした小真面目な議論や言い争いも少なからず増えたかも。こういうのをやはりご飯の時間やリラックスタイムには持ち込みたくないのですが、それも今はまだなかなか難しいです。特に締切りせまった仕事の前などは。長年揃って完全に同業・自営業をなさっている世のカップルや夫婦の皆さんは、やがて公私うまく気分や接し方を切り替えるのがうまくなるのでしょうか。子どもができるとまた変わるのかな?

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そんなふうに一部行き過ぎた進化もしてしまったけれど、基本的には今では、お互い「喋りたい内容や気分に合わせて無意識に言語を選ぶ」ことがうまいこと日常化しています。共に疲れているときは私が延々日本語で喋ってミッコが延々フィン語で返すのもまったく違和感がないし、オモロイことを語らうときは関西弁、フィンの時事ネタを語るならフィン語、相手がしんどそうだったり不機嫌なら相手の言語…などなど。少し前まではやはり基本事項は日本語、小難しい話はフィン語と、能力重視で言語を選択せざるを得なかったのですが、このおかげでオフ時間が真の意味で楽に、楽しくなったとつくづく思います。

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かなりの頻度で、日フィンのカップル間のコミュニケーションの秘訣を尋ねられるのですが、これは状況や相手の話せる/話したい言語環境で千差万別なのでなんとも言えないけれど、私達がやってきた努力で言えば、まずは「(最初のうちは楽だけど、お互いにとっての非母国語である)英語を封印すること」、そして「どちらかの言語や文化背景に偏らず、バランスよく双方の言語や文化を理解し利用すること」だったかと思います。図らずしもひとつめの話にも続く教訓ですが、結局確固たる境界にこだわらず、しなやかに立場や姿勢を変えながら、曖昧でも双方が心地よく感じられる地点を探っていくのが、何事においても大切なのだと思うのです。グッドバランスの落とし所を見つけたり、そもそも互いの言語をストレスなく話すようになるまでは苦節も続くのですが(笑)、その努力のなかでやがてその二人ならではの心地よいバランス感覚が培われていくのかなあ、と個人的には感じています。そしてこれから更なる時間とともに、どんな方向へと自分たちが変わり続けていくのかもまた、楽しみ。

ayana@voru.ee


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今日は祝日。家に留まるのも退屈なので、ミッコのボクシングからの帰りを待ってボウリング行ってきます!





posted by こばやし あやな at 20:22| Comment(0) | Viro-エストニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月18日

異国情緒にさくっとアクセス

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タリン旧市街の異国情緒は手軽にフィンランド訪問客を沸き上がらせることができるのでありがたい場所です(笑)

ayana@tallinn.ee

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明日はふたたびヘルシンキ観光

posted by こばやし あやな at 05:05| Comment(0) | Viro-エストニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月10日

プチ海外旅行

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というわけで、今日はお向かいの国エストニアの首都、タリンに日帰りで出張してきました。

なにはともあれ、久しぶりの海外旅行!!
タリンの旧市街の色彩美と入り組んだ路地裏の連続、そして新市街の高層ビル群は、昨夏のパリ以来みごとにフィンランドに引きこもっていた私が異国情緒に浸るには十分すぎるくらい。けれど言語に関しては、英語よりむしろフィンランド語のほうがずっとよく通じるのが愉快。希少な親戚言語だもんな。

タリンにはかつて何度も足を運んでいて、最後に来たのは、日本の研究室の教授がヘルシンキ・タリン同時開催の学会で渡航されていた時のお付き役だったっけ。そのときに限ってはひたすら食べて飲んでヨイショしていた記憶しかないのですが…。
でも実は通貨がユーロに代わってからは初めての渡航。それに伴い少しずつ物価は上昇しているようだけど、相変わらず帰りのフェリーで目撃したフィンランド人たちのお酒の買い付けっぷりは凄まじかった…何も知らない日本からのお客さんが、何ケースものビール箱をキャリーカーで押して歩くフィン人の群列を見て唖然としてました(苦笑)


ところで今晩から、うちにお一人お客様が泊まりに来ています。なんと偶然、私とどうめいの「あやなさん」、しかも幼少期のフィンランド在住歴6年。彼女との数奇な出会いと交流記は、また週末に落ち着いたら書きますね。とりま相変わらずのつまらない節電日記でごめんなさい。明日は朝から、サバイバル森ツアーの先導ガイドです。あんず茸がまた豊作でありますように!

ayana@tallinn.ee


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芸術史専門のあやなさんと絵画コレクター大家さんが隣部屋でアート談義中

posted by こばやし あやな at 05:56| Comment(0) | Viro-エストニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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