
昨晩部屋で読み物をしていたら、大家さんが「アヤナ〜オリンピックの開会式せっかくだから見ましょうよ」と声をかけてきてくださり、ほいほいとリビングに行くと、ビール瓶にスナックやらイチゴやらのおつまみ完備の鑑賞会場が特設されておりました(笑)
で、こちら時間10時に始まった中継番組を見始めたはいいのですが、まあ選手ドキュメントばかりが延々流れて肝心の開会式が一向に始まらず、ふたりともお酒が入ってだんだんトロンとしてきちゃって。ようやくあの壮大なショーが始まって、気を持ち直しおおぉといちいち感動の声を上げながら見てはいたのですが、だんだん二人とも見ることに疲弊してきて…やっぱりかわりばんこに、ウトウト。
やっと選手入場が始まってくれたので、とにかくジャパンのJまではなんとか見届けようと二人で誓い、各国の選手のコスチューム批評をしつつ、時刻既に1時すぎにようやくFinlandおよびJapanの選手団勇姿を見送り完了。「お疲れ様」と労いあって無情なほど即お開きとなりました(そして大家さんは今日から一週間バカンスで、早朝にポルトガルへと旅立たれました)。
嗚呼、フィンランドの出順がお国言葉の「Suomi」でなくて心底よかったです…。
閑話休題、ずっと延びていた先週末のハメーンリンナ日記を、ようやくここにて完結させたいと思います。

ハメーンリンナという地名自体が、実はそもそも「ハメ城」という意味。その名のとおり今も中心街のそばに古城が残る、いわゆる城下町ですね。
フィンランドには、要塞としての役割を果たした有名な古城がいくつかありますが、どこの風景も、今や一様に長閑で穏やか。水辺に敷かれた広大な芝生の上にそびえる、無言のお城の素朴すぎる佇まいからは、日本のお城と同じくかつてそこで血なまぐさい戦や権力闘争が繰り広げられた歴史を、どうやっても想像できないのです。

見れば見るほど、かつて人の手が作り出した極めて人工的なランドスケープだし、国は違えどここもまた「兵どもが夢の跡」の舞台。なのにこのシンプルな城一帯の風景を見つめていると、世界がまだまだ悲しみで満ちていることや、自分が短命のせわしない人間であることさえを忘れて、ただ恒久の平和や安らぎを信じたくなる不思議な気持ちに包まれる。

お堀もあるけれど、これくらい馬でぴょんと飛び越えれそう。ほんとに守る気あったのか?と思ってしまう(笑)

あぁいいなあ、こういう全てをさらけ出した潔い壁。まるで地層のように、壁をより高く強くせねばならなかった、あるいは改修を余儀なくされたそのときそのときの、時間的ゆとりや手元にあった素材と技術が、ありありと見て取れるのです。

決して華美な雰囲気はなくもはや洞窟探検のようでさえありますが、お城のなかの見学もぜひどうぞ。

ハメ城の敷地内には、メインの本城以外にもいくつか見学可能な歴史博物館があり、砲兵博物館などいずれもテーマがやや重くていかにも見応えがありそうなのですが、この日はあまり時間もなかったので、個人的に一番気になっていた「刑務所博物館」に入ってみました。お城の本丸だったとされる一角は、いつしかそのまま監獄と化し、1970年ごろまで使われていたのだそうです。
こ、この独房が並ぶ光景…まさに囚人大好きカウリスマキ映画の世界そのもの。むしろここがロケ地だったこともあったのではと思わされる既視感…まあ、刑務所ってどこも大差ない雰囲気か?

ほら、このマリメッコがデザインしててもおかしくなさそうなオシャレ囚人服も、映画のなかで記憶に残っている色デザインそのもの。

そして初めて自分の目で見てスケール感を実感したいわゆる「独房」は、日本の貧乏一人暮らしと大差ない十分な床面積と設備に恵まれている気がしました。外から届いた絵葉書が壁に何枚も飾られていて、なんだか温かな雰囲気さえ感じます。

それから、刑務所だろうとどこだろうと、やっぱりサウナの享受権は不可欠らしい(笑)日本の刑務所でも、シャワーだけじゃなくいわゆる湯船につかれる日なんかが決められているのだろうか。
他にも、刑務所には託児ルームもあって、小さい子供のいる受刑者は最大2年間(だったかしら)子どもと一緒に入所可能という、果たして子供にとってそれが良いのか悪いのか判断しがたい選択肢も用意されている…などなど、未知なる世界の潜入ドキュメント番組を見ているかのような新鮮な展示と情報が満載です。
なんせ日帰り旅道中の数時間滞在だったので、立ち寄ることができたのはせいぜいこんなところ。あとは故郷ユヴァスキュラを想いながら湖畔をぶらついて水景を写真に収め、夕刻にはヘルシンキに帰還しました。イーッタラ&ハメーンリンナの組み合わせは、ヘルシンキからの思いつき日帰りには程よい距離とエキゾチシズムがあり、なかなかよいチョイスだったかと思います。
ayana@hämeenlinna.fi
明日はヘルシンキ市内某所をぶらぶらする予定