2014年05月13日

エイ・カハタ・サナー

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出発前に日記に書き残したブラジリアン柔術オープン戦観戦(&母の日帰省)の旅から戻ってきました。

ヘルシンキまでは、ミッコの所属するユヴァスキュラ・ファイトクラブの皆さんの乗り合わせた車に部外者ながら乗っけてもらいました。ユヴァスキュラはとりわけ女子武闘家たちのレベルがとても高いらしく、車内は過去の欧州チャンピオンシップメダリストやら国内初のブラジリアン柔術黒帯獲得者やら…そうそうたるメンバーが集っていて、車中話に耳をそばだてていても未知の世界すぎてまったくついて行けず。
大会の日の朝のミッコは、その前日よりは落ち着いているように見えたけど、日本語は一言も喋らず(最近会話はもっぱら日本語なのに)フィン語でベラベラと止めどなくしょうもないことを半ば独り言のようにしゃべり続けていたり、突然握ってくる手が氷のように冷たかったり、やっぱり半端ない緊張と戦っていたんでしょうね。なんせ一年ぶりの大会出場、しかもこのオープン戦は国内外から強者の集まってくる大きな大会だったそうなので。

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乗り換え案内にしたがって到着したヴァンターの会場は、バス停からの道に既視感があるなと思ったら、なんと8年前の建築留学中に見学に来た特徴的な木造スタジアムのあるアリーナでした。写真のような感じで、4面の道場でさまざまな重量・帯別のトーナメント戦がスムーズに進行してゆきます。
噂には聞いていたけど、ブラジリアン柔術の選手団はスキンヘッド(女子は頭皮剥き出しの編み込み)&銭湯出禁級のド派手なタトゥー率が高く、厳つすぎて怖い!!!(笑)ファイトクラブのコーチを務めているヴェンラが、首からさげておけば観戦料が無料になるコーチ用パスポートをそっと貸してくれたんですが、着席した時点で基本ルールもスコアボードの読み方も何もわからなかった場違い極まりない私がこんなの付けてても、すぐにバレてつまみだされるんじゃ…とヒヤヒヤ。しどろもどろな私に基本的な観戦の着眼点を手短に伝え残すと、何日も前から必死で考えていた「見送り時のキメの一言」を私に言わせる隙も与えず、ミッコは一瞬こっちに親指だけ立てて選手たちのウォーミングアップスペースに去ってゆきました。。。

ミッコの初戦相手は、なんと今回の大本命と言われていたデンマークオープン戦の覇者の若きノルウェー人トミー。彼は柔道畑出身で、幼少期からもうなかばプロさながらの意気込みで柔術を続けてきている武道家なので、正直、試合前でさえも勝てたら奇跡と言わざるを得ませんでした。ミッコも彼同様に柔道と二刀流のプレーヤーなので、勝敗の鍵は立ち技にも大いにあると予想。トミーの戦歴はいくらでもインターネット動画にあがっているので、二日前にトーナメント対戦相手が決まってからは家でもそればっかり見て相手の強みや弱点などを研究していましたが…さあ、これまでの膨大なる努力の結果がどう出るか。


小一時間ほど、止めどなく続いてゆく他の人達の試合をぼんやり眺めているうちにいよいよミッコとトミーの対戦が始まりました。試合の上限時間は6分間。

けれど、決着はわずか1分あまりでついてしまいました。

「はじめ」の瞬間から、理性ある人間というより野獣そのものの獰猛さで突っかかってきたトミーにはわずかな隙もひるみもなく、応戦するうちの一瞬のほころびを突かれて、彼の一番の得意技と事前から警戒していた巴投げをかけられたあとに、見ているだけでもきゅうっと自分の身が硬く縮むような十字固めで動きを封じられて、ほんとにあっけなく惨敗。一応望遠レンズをスタンバイさせていただけど、シャッターを切るどころか、終始両拳を硬く握りしめていてカメラを構える余地すらなかった。

正直にいって、私はこの戦い開始から終了までの数分間で、我が身ごとでは近年感じたこともなかった、甚大な緊張感とショックを受けました。

スポーツといえば、ある程度の長時間のなかで、時間ギリギリまで粘る余地と価値の与えられるべきものばかりだ勝手に思っていました。自分がこのかた唯一経験のある競泳だって、戦いの時間こそ秒単位で短いけれど、プロセスや結果がどうであれ、ともかく自分がゴールするまではやり遂げさせてくれるものです。けれどこの一対一の非情で残酷な競技は、このマットの上に立つために長い時間と労力をかけて心身を作り上げてきたプレーヤーのすべてを、時にこんなにもあっけなく打ち砕き、まだ残り時間はあっても再起のチャンスを拒絶し、観客の視界からぶざまに去らせてしまうのかと。

この一ヶ月、時にあわわと手を差し伸べて支えながら、あるいはチクっと愚痴を漏らしながらも、基本的に傍で静かに見守ってきたミッコの努力や情熱の欠片が、急にまるで走馬灯のように、どっと空っぽの頭になだれ込んできて、やがて嗚咽が出そうなくらい涙が止まらなくなった。いやいや、私が泣いて迎えるなんて筋違い極まりないやろ!と羞恥心から急いでトイレに駆け込み、個室にてうおーと短期集中で涙を出しきって、目元のメイクを直して、まあ残念だったね、くらいの微量な悲哀を帯びた表情を作ってそそくさと観戦席に着席。
けれどやがて、ボストンバッグを担いでのっそりと客席に戻ってきた無表情のミッコが、微妙な沈黙のあとに開口一番「見ててくれてありがとう」とこの日初めての日本語でぽつんと呟いたのを聞いて、再び修復方法がわからないくらいに涙腺が決壊してしまう。見送り時の言葉は前日まで一生懸命練っていたけど(結局使うチャンスなかったわけだが)、負け帰ってきた時の最初の一言なんて、縁起悪いからと事前にはまったく考えないようにしてた自分を呪う…嗚呼もう私サイドからなんて言葉を返したらいいのかわからない。お疲れ様もちがう、カッコ良かったよも軽すぎる、ごめんねなんてもってのほか。結局うつむいた顔の下方から絞り出されてきたのは、「柔術って、残酷な競技だね」の一言だった。

この私の複雑でナイーヴな心情と心遣いの空回りを、さり気なく汲み取って逸らそうとしてくれたのか、あるいはまったく気づいちゃいないのか(はたまた語義間違ってることに気づいてないのか)、ミッコは「えーなにーアヤナそんなに感動しちゃったの??(ニヤニヤ)」と私の不穏当な涙をパーカーの袖で拭いながら、ちょっと向き直って表情を締め戻して、「柔道や柔術は、そういうもんやで。悔しくないのは優勝する人だけやから。だからもっと強くなりたいってずっと思えるやろ。」といかにも武闘家らしいコメント(でもフィンランド語訛りの関西弁がそのシリアスさを2割減させている…)を返してきた。
ちょっとタイミングがはやすぎるかとも思ったけど、今回の試合、自分ではどうだったの?と訊いてみると、「エイ・カハタ・サナー(二言なし)。俺はトミーより完全に弱かった。十字固めをされたとき、今の自分は絶対にトミーに勝てないとわかったから、トミーへのリスペクトのためにすぐ降参した。彼はほんまにすごい奴やった。でもあとで喋ったら、めっちゃおもろい奴やったで。戦った敵とあとでいい友達になれるのも、武道のいいところ」とさ。うーん、わかるような、わからんような、悶々とした感触が私には残る。「諦めたらそこで試合終了です」という言葉が、なんだかこの流れではただの自己チュウ文句に聞こえてくるではないか?自分の弱さを認めてさっと潔く身を引くこともスポーツマンシップなのか?

ともかく、本人は、晴れやかというわけではないけれど無念を露わにしているようでもないので、もう私は他人らしくほっとく。本人が胸中に抱えている(であろう)複雑な思いは、あとは自分で適切に処理をしてまた孤独に次へ向かうだろうから。
でも、「ちょっとクールダウンのストレッチしてくるわ」といって再び選手控えスペースに降りていった彼が、柔軟体操の区切りごとにふっと手をとめて横で続く試合をぼうっと無表情で眺めているのを見ていると、そうはいってもやっぱり本音は、この晴れ舞台で今まで練習してきた身のこなしをもっとたくさん実践したかったに違いない…とつい心情を察し(た気になっ)てまた切なくなってしまう。でも、もう後はほっとく。


そのあとは、「アンタ選手やめてアナウンス席入ったほうがいいんじゃない?」と突っ込みたくなるようなミッコの憶測心理描写つき関西弁実況中継を聞きながら、まださらに150試合ぐらいを休みなく観戦。おかげさまで、始めはアメーバのように選手同士がからみ合って地をアメーバのようにずりあっているようにしか見えなかったけれど、ようやく頻度の高い技ならだいたい見分けられるようになったし、スコアに頼らずともどっちのほうがウワテかなどわかるようになってきました。
ユヴァスキュラ勢の試合時には、コーチパスポート所持者権限でマット脇までしゃしゃり出て、みんなで精一杯応援。今回ユヴァス勢は予想外に本命が次々に敗退して全体としてはやや重い空気が漂っていましたが、期待の新人ハンナ=リーッカが見事金メダル、翌日の無差別級でも銅メダルを獲得するなど大健闘してみんなの笑顔を呼び戻してくれました。

そしてミッコをらくらく降したトミーは、その後も「楽勝」続きであっという間に決勝戦へ到達。しかしそのいっぽうで、トーナメントの反対側からこれまた次々に一本を決めて勝ち進んでいく長身のフィンランド人がその存在感を観衆の目に焼き付かせていました。決勝はもちろんこの二人の対決に。野獣対猛獣の決戦はまさに互角といった感じで両者ポイントを先取できないまま制限時間が来て、レフェリーの判定によって金メダルを奪取したのは結局フィンランド人のほうでした。私たちとしてはこのままぜひトミーに勝ってほしかったけれど、どこの世界にも上には上がいる。それまでずっと笑顔を浮かべる余裕すら見せていたトミーは他者の判定によって敗北のレッテルを貼られた瞬間、その場でがくんとうなだれて、しばらく道場に突っ伏し立ち上がれずにいました。
スタートまもなくの一瞬の敗北もあれば、上り詰めた山の頂の目前で蹴り落とされる敗北もある。どちらの悔しさも、自分のような門外漢の第三者が推し量れるものではないですよね。
ちなみに、最激戦と言われたこの青帯82.3キロ級のトーナメントを制したフィンランド人さん(名前失念、すみません)は、翌日の無差別級でも巨漢たちを見事に伏せ続けて、堂々の金メダルを獲得していました…ひゃーさすがだ。

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二日に渡るすべての試合から、片付けでアリーナがからっぽになるまでを見届けて、日曜夕方に遅まきながら恒例「母の日訪問」のためにレイヴォンマキに到着。いつ見てもこの庭から眺める湖畔の景色の美しさには癒やされる…
庭先のグリルマシーンで焼いたマッカラやら野菜やら、ミッコママ特製ブルーベリーパイでお腹を満たして、サウナと夕陽の落ちていく湖とを素っ裸で行き来して、ハリーポッターの映画を見ながらうとうと寝落ち。今日もお昼すぎまで自分自身の帰省のように何ら肩肘貼ることなくゆっくりのんびりさせてもらって(次の記事のための撮影にまで家族総出でお付き合いいただき)、先ほどパイのお土産をどっさりもらって久々の我が家まで送り返してもらいました。おおお、室内で育てている例の野菜たちがどんどん芽を伸ばしています!

ちなみに、これまでの禁欲生活から解禁されたミッコがトチ狂ったようにあれもこれもと食べ続けているのがいささか心配です…まあそりゃしょうがないわな、という気もするけども。土曜の夜はヘルシンキの街に繰り出して、わりと最近出来た居酒屋風中華料理屋さんで青島ビールで乾杯し、こちらではめずらしい羽付き餃子などをたらふく食べ(トップ写真参照)、店を出た後は悲願の(笑)チョコアイスを買って、ちょっと寒い思いをしながらもテンションマックスで頬張りつつ、我々には十分大都会に思える賑やかな中心街を少し歩きました。

たぶんこれからも(そろそろお互い将来設計を第一にしながらも)私は音楽の道を、ミッコは武道の道を一生かけて歩み続けていくんだと思うけれど、お互い相手の(アマチュアながらの)プロ意識と知識経験量と自己コントロールにまかせておける領域を下手に干渉したり余計なお世話で濁したりはせず、良いの距離から敬意を払って見守って、一区切りのたびに「見ててくれてありがとう」と相手にほっとしてもらえる塩梅で支えあっていけたらいいなと、強くそう思いました。

ayana@jyväskylä.fi


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さて、今週は鬼のような仕事の山が待っております…

posted by こばやし あやな at 03:33| Comment(0) | Vantaa-ヴァンター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月04日

GO☆SU☆RO☆RI



講習会の悪夢はひとまず忘れ、昨晩はユバスキュラ大学日本友達サークルJYJY(Jyväskylän YliopistoJapani Ystävät)のサマーパーティに参加。

遅れて到着すると、学業やサマージョブでユバスキュラに残っているお久しぶりなフィンランド人学生友達、日本への交換留学からの帰国ほやほや組、もうすぐ帰国間近の日本人交換留学生、そして次年度一年間大学で勉強する新米日本人交換留学生たちが総勢20名ほど、おのおの心地よい場所を見つけてくつろいでいました(うちの大学は語学教育にとても力を入れていて、秋からの留学生のために8月一ヶ月かけて無料のフィン語クラスを開講しているので、すでにたくさんの留学生が到着しています)。

JYJYパーティ恒例、本日の指定衣装は「和装」だったので、一番目立ったのは麗しの浴衣姿、ほかに甚平や自分が嗜んでいる武道の道着など。私は…例の女装趣味の友達に相談の末、人生もちろん初のゴスロリコスプレに挑戦。ルームメイトのKatiに化粧と着替えを手伝ってもらい、初めて人前に出た瞬間は全身炎上してそうなくらい羞恥心まみれでしたが、まぁこんなときならではの貴重なアイドルマインド体験でした。

それにしても、相変わらずこのサークルは穏やかながら、すぐ互いに興味を持ち合うオープンマインドな雰囲気が心地よいです。

普段やり取りや新企画発案の主体になっているのは私が今のところ管理しているフェイスブックサイトなのですが、帰国した先輩から教えてもらったようですでに新留学生みずからが自己紹介をしてくれていて、それに対するフィンランド人たち一人ひとりからの温かなレスの嵐が、傍観していても胸を熱くします。きっと彼らもこのまま安心して雰囲気に溶け込んで、じきに次年度のユバスキュラ日フィン交流の要となってゆくのでしょうね。


もうすぐまた新しい一年間のはじまり。日本人留学生が総入れ替えになる上、前年度このサークルのムードメーカーであったフィン人男児たちがまもなく揃って出国してしまうのは寂しいけども、昨年度のカラーにとらわれず、まっさらなキャンバスに一から絵を描きはじめるような気持ちで日々を構築してゆければと想像すれば、期待も弾みます。


ayana@jyvaskyla.fi


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明日はもうユバスキュラ休暇の最終日か…

posted by こばやし あやな at 13:54| Comment(2) | Vantaa-ヴァンター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月09日

空港到着ゲートにて



昨日のお仕事は空港始まり。
普段、自分事だと余裕に余裕を重ねて空港に到着することはまずないので(汗)、よい機会だからと仕事前にようやく立ち寄ることのできた到着ゲート前のスタバ。なんとここが、先日できたばかりのフィンランドのスタバ1号店なのです!

コーヒー消費量が世界一とも言われるフィンで、なぜかこれまでスタバが1軒もなかったという事実は、その内情を知ればうなづける。フィンランド人にとって大事なのは、コーヒーの質ではなくコーヒーブレイクの時間それ自体というわけです。安くて構わないから、できるだけたくさんコーヒーを飲みたい、あるいは「お茶する」ようにコーヒー片手に誰かとお喋りする時間がほしいのです。 

そんなわけで、今後フィン国内でも店舗数増加を目論むスタバの新規参入姿勢には、どちらかというと懐疑的な思いを抱く現地人も少なくありません。だって、この国にはすでに安くて自分たちの味覚にあった大手国産メーカー「ロバーツコーヒー」があるものねえ…。今後の社会浸透具合の観察がある意味楽しみです。


スタバはさておき、空港の到着ゲートって、まさにそこをくぐって出てくる人の数だけ、その人にしかわからない感動や、興奮や、希望やドラマがあるんやなあということを心底実感しました。まだ見ぬ憧れの地を踏みしめた人の、無防備なくらいはっきりと顔に浮かんだ感激や不安の色。自分の到着や帰りを待ってくれていた人との再会に感極まる人々の抱擁ラッシュは、その人たちの人間関係や背景を何も知らない他人の私までその都度ぐっときとしまう。自分も一年後ここで相方の帰国の瞬間を待つときは、同じくらい気持ちを震わせることになるんだろうか、とか想像したりもして。気づけば、あのゲートから出てくるすべての人に、心からのようこそ/おかえりなさいの言葉を念じている自分がいました。空港、つくづく素敵な場所だなあ。

ayana@vantaa.fi


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さて、仕事にもどりますかな

posted by こばやし あやな at 13:52| Comment(0) | Vantaa-ヴァンター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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