2012年08月12日

タンペレ大聖堂のいわくつき壁画

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一週間続いた地方都市ガイド(名所さんぽ&ご当地図書館めぐり)のお仕事が、本日のタンペレ行きを最後に無事に終了しました。連日、移動にも結構な時間をかけつつ日帰りで出向しては、夜帰宅して眠い目をこすりつつ翌日の訪問地の予習(背景情報やエピソードはすでにおよそ頭にあるので、頭痛の種はおもに年代暗記でしたがが笑)…を繰り返していたので、なんだか不意に高校の定期考査シーズンの心身感覚が呼び覚まされた日々でもありました。毎朝、集合場所へと向かうバスではT.M.Revolutionを聴いてテンションを引き上げるのもすっかり慣習化(笑)
ともあれようやく明日は、目覚ましもかけず、久々に一日ゆっくりできるー!


タンペレでもちろん今日も訪れた、欠かせない観光地のひとつタンペレ大聖堂。

ここは、一見いかにも北欧のナショナル・ロマンティシズムを思わせる石造りの中世風な外観で、とりたてて違和感もないのですが、中に入ると、ここはほんまに教会かいなとぎょっとさせられるような装飾や絵画に満たされた、当惑の空間が広がっています。アーチ天井の頂部にはりんごを口に加えた邪悪な蛇の姿、そしてバルコニー席の壁面に描かれた花綱を握るのは、天使ではなく生々しい全裸男児たち…

この大聖堂内部のフラスコ画やステンドグラスの絵師を務めたのが、前世紀のフィンランドの国民的画家のひとりに名を連ねるヒューゴ・シンベリ(Hugo Simberg/1873-1917)。

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彼の作品のうち国内外でもっとも有名なのは、この「傷ついた天使」という作品でしょうか。ヒューゴ自身が鑑賞者に一切の解釈をゆだねてしまっているこの意味深な作品自体は、大聖堂の装飾を任される直前に発表されていて、現在はヘルシンキ駅前にあるフィンランド随一の美術館アテネウムで見ることができます。が、実はタンペレ大聖堂にも、まったく同じ構図の拡大版フレスコ画が残されているんです(通常上がることのできない2階席の壁なので、間近に眺めることはできないのですが)。


上で例をあげた奇妙奇天烈な壁画ひとつひとつにも、もちろん象徴主義画家と謳われる彼なりにこめた思想と祈りがあるわけで、機会があればまた解説も試みたいのですが、今日とりわけ一点だけ取り上げたいのは、大聖堂一階の祭壇そばに描かれたヒューゴのフレスコ画「死の庭園」。こちらもオリジナルの絵は教会壁画を手がける以前の1896年に既に発表されています。

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メインモチーフは、見てのとおり天使どころかガイコツです。
死に怯える信者の魂を救済し、天国へと導くことをお約束しているはずのキリスト教の聖域に、むしろ死への恐怖の象徴的存在ともいえる、ガイコツの絵だなんて…不気味どころか不謹慎極まりないと思われても仕方ないでしょう。


実はこの絵、相方ミッコが大好きな絵画作品のひとつで、以前にその真髄について呆れるほど熱く語られたことがあったおかげで、今回私自身は抵抗なく、むしろなるほどという静かな納得を持ってこの絵を眺める(ガイドする)ことができました。

というのも、ヒューゴ自身の死生観は「輪廻転生」が根源にあったらしく、人が死去したあとの魂は、いわば一時的な冬眠に入るようなもの、と捉えていたらしい。ふたたび春が到来し、太陽の光に呼び覚まされる新芽のように、いずれ魂も再生する。そしてここに描かれたガイコツたちは、死への先導者であるとともに、その休眠中の魂の庇護者でもあるのだそうな。つまり、この絵でガイコツたちがさも愛情深く(?)水をやり育て上げている個性あふれる植物たちは、ふたたび現世に根をはり大輪の花を咲かせる春の日を待つ、死者の魂の象徴だというのです。

ミッコは、きっとヒューゴは「死=恐怖」だという概念自体を覆して、誰もが逃れられない死を恐れる人々の心を和らげるためにこの作品を描いたのだと思う、と話していました。なるほど、そうした視点でこの絵に対峙すると、一見不気味で暗いモチーフや色使いの絵の中に、なんとなくほの明るさが感じられたり、ガイコツの表情に愛嬌すら見出す余裕が出てきます。


ヒューゴがこの絵画に込めた死生観自体は、もちろんキリスト教の教えと根本的に矛盾しています。実際、聖堂にこの絵が掲げられるとなってもちろん反発の声もあったそうですが、共感の声もまた大きく、すでに1世紀が経過する今日まで、大聖堂にこれらの絵画が残り続けているのが、人々の素直な反応といえるのかもしれません。まあそもそも、ぶっちゃけてしまえば信仰心が薄いフィンランド国民ならではの寛容さによるところが大きいのかもしれませんが。

もし今後タンペレに立ち寄る機会のある方は、ぜひこの一視点を参考に、新たな気持ちであの不気味な壁画たちを眺めてみてください!

ayana@tampere.fi


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明日休日なのが嬉しすぎて寝付けない。


posted by こばやし あやな at 07:32| Comment(2) | Tampere-タンペレ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月19日

タンペレにてしばしの別れ

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昨日はタンペレに繰り出し、観光…というよりほぼただの美食ツアーでしたが(なんせ日が短くて…)、島村くんおもてなしの最後の一日をともに満喫してきました。いつからかフィンで一番美味しいと噂されるようになった展望台のドーナッツ、フィン全土から在住日本人がわざわざ足を運ぶという幻のラーメン専門店、いやあ胃袋が興奮しっぱなしでした〜!初めて聴くタンペレフィルの公演も、(曲によりけりでしたが)概ね満足だったしね。


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そうしてたっぷり遊んで食べ、夜10時ごろに駅での最後のお茶タイムに区切りをつけて、彼はヘルシンキ行きの列車に、私はユヴァスキュラ行きの列車へと乗り込み、なんとも切ない気持ちを笑顔で隠してお別れしました。

この三日間、東京での勤務時代の思い出話にこれでもかと花を咲かせました。ふと手を止めて何かを考える暇も省みる暇もないほど、馬車馬のように働くほかなかった満身創痍の編集者時代。それに比べて今の生活は、ひょっとしたら体を動かしている時間より思索にくれている時間のほうが長いのではないかというほど、己の心と向き合わざるをえない穏やかな時間と静かな環境のなかに身を置いているので、ときどき、思いつめて心の疲労感に苦しむこともあるほどです。「フィンランドだって、日本であんなにもちやほやされるほどユートピアじゃないよ。。。」と、ふと彼の前で心の本音も漏らしていた自分。どちらの生活がいいのか、どう生きてゆくのが私むきなのか、答えは簡単にわからないけど、信頼できる母国語でたくさん返してもらった励ましや返答を心にストックして、また今日から自分の居場所で、持ち場で、精一杯頑張ってゆかねばなと思っています。


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P.S.それにしても、タンペレはかつて何度か赴いたことあったのに、今日ほど大都会に思えて面食らったことはありませんでした…ユヴァスキュラに住むようになって、ヘルシンキを大都会と認識するようになったのには気づいていましたが、もはやタンペレでさえこの規模と忙しなさにむせ返りそうになるとは…一時帰国の日が末恐ろしや。。。


ayana@jyväskylä.fi


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さあ、そろそろ今晩のパーティ準備に取り掛かろう!

posted by こばやし あやな at 21:35| Comment(0) | Tampere-タンペレ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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