2016年09月12日

夏、おわる

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今年もまた、短い夏が巡ってきて、そして去ってゆきました。

夏は、フィンランドで暮らす人々にとって、一年という大きなバイオリズムのうねりのなかの「躁」の期間です。そのことを、この地で夏を過ごすたびに強く実感します。そしていまや自分自身が、その軌道に見事のせられてしまっていることも。今は季節が秋に交替して、いちばん冷静かつ穏やかに日々や自分自身を振り返ることのできる時期です。そして間もなく、辛いこと、耐えるべきこと「ありき」の環境のなかで、それでもどれほどストレスや苦難を抱えず(抱えておらぬふりして)楽しく穏やかに過ごしていられるか、試される季節がやってきます。一年はそうして波を寄せて返して、下地だけみると延々と同じ波形の繰り返しです。

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今年は総じて、例年になく非常に良い(気候の)夏でした。夏至祭の日が雨が降ったり寒さに凍えずに迎えられたのもいつぶりかという感じだったし、キノコを育てるにわか雨が適度に降りつつも、気持よく晴れる日がとても多くて、あまり寒い思いをせず、かといって暑すぎず、不平不満なく過ごせる日がとても多かったように思います。さらに夜が暗くなり始めたころからオーロラも連日連夜ビッグウェーブ。日中は外でよく泳いだし、ベリーもたくさんストックできたし、なによりキノコが早いうちから大豊作でした。年々キノコ採取の知識経験にたいする飽くなき野望が肥大化し続ける我々夫婦。今年はついに、松茸の大脈を探し当てて数キロにおよぶ収穫が得られたほか、今年はじめて天然シメジの見分け・採取にも成功しました(去年まではフィンランドの森で採れることすら知らなかった)。シメジは、フィンランド語でもshimejiと表記されます。ポルチーニも、杏茸も、その他あらゆる食用キノコをまんべんなく大収穫。まあ当然ながら、我が家の食卓に日々キノコが並ばない日はありません。

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と、お宝ハンティングに関しては十分リア充してはいるのですが、幼少期からのナンデモ収集癖が抑えられずポケモンもちゃっかり集めています。先日ようやく、この小さな街の中の移動だけで100種達成!どこかのポケスポットにたむろして…という時間までは取れないですが、ユヴァスキュラ内で日常的に(もちろん仕事中はオフにしてますよ笑)自転車や徒歩での外出の行き来の際につけっぱなしにして待ち構え、気が向いたらほんのちょっと遠回りして帰ってみたり…ということをしているだけでも、開始(7月下旬)から今日までですでに200キロ近く移動しているようなので、なかなかびっくり。公共交通機関に頼れないこの街、日々それなりに動かざるをえない生活してるんだなあ…と気づかされました。

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と、ここまでただひたすらレクリエーションのことばかり書いてきましたが、お仕事のほうもまずまずの充実度で、今夏も無事に身ひとつで走り切ることができました。今年の夏はたまたま、われわれ一般人がいわゆる「有名人」と呼んでいる方々のプライベート旅行やお忍び滞在時間を預かる、という機会が続きました。私自身も日本にいる時から(テレビや本や作品を通じて)よく知っていた、影響を受けた方たちです。同じ日本という国に暮らしていたときには、そうしてメディア越しにしか見聞きすることのなかった遠い存在の人たちと、こうしてフィンランドに出てきてからご一緒させていただく、しかも私のスキルを信じて頼ってもらえる、というのは、話をいただいた瞬間もちろん不思議な感覚に身を持って行かれ、舞い上がってしまいます。
でもその不思議さにどきどきそわそわしてしまうのは実際に対面する時間までで、出会って、交流がはじまると、もうそのときは人生で出会った1人の生身の人間です。その圧倒的な感性や才能や努力のきらめきが何げない言葉や仕草の隙間に覗いて、おなじ人間でもこうも持ち合わせているものが違うのか…と羨望とうんざり感が一気に我が身を襲う瞬間ももちろんあるのですが、傍からすればなんと図々しいことかと思われるのかもしれないけれど、あ、この人とは相性が良いしきっと仲良くなれる、と琴線に触れる心の交流ができるときもあるのです。

ともかく、一際多忙で人の目も気にしなければならない生活を送ってらっしゃるなかで、貴重なオフ時間をここで穏やかに、楽しく、効率よく過ごすために自分を頼ってくださった皆さんに対しては、こちらも、メディア媒体のためのロケや取材撮影にのぞむときとは違ったもてなし方や接し方が必要とされる…というか喜ばれることを、一瞬一瞬のレスポンスから体得させてもらいました。こうした経験からも、今年の夏はコーディネーターの大事なスキルなひとつである「おもてなし力」の幅を特に広げてもらえたような気がします。

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photo: Petteri Kivimäki


今年の夏のもうひとつ思い出深いできごとは、大学の卒業式に全修了生総代(primamaisteri)として出席し、いろいろと一世一代の大役を遂行したことです(当初はいち学部の総代だと思っていて蓋を開けたら、責任の規模が違ってた…)。こちらはまた一から言葉を変えて振り返るのがしんどいので、以下、まずは当時のフェイスブックの日記をコピペさせてください…苦笑

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四年に一度開催の大学全学卒業式(過去四年のマスター・ドクター修了生を対象にした任意参加の修了認定式)に、全修了生の総代という名誉ある大役を背負って参加しました。全参加者の一番前を歩き、式中にはお世話になった教授と一緒に登壇して、修士論文の内容について公開ディフェンス儀式に挑みました。
フィンランド語で文学部の論文一本書けば、語学の実力もつくだろうし世間にも在住コーディネーターとして認めてもらえるだろう…という一心で捨て身の渡フィン。当然最初は授業についていくことすらままならなく、その後の進捗を思い返しても、当然こんな日が来ようとは想像だにしませんでした。ここまで、幾度か心折れる寸前まで七転八倒してた自分への「頑張ったで賞」として、また学生生活を実務でも精神的にも支え続けてくださった方々への「感謝の証」として、誇り高く全学生の一番最初に冠をいただきました。

人生二度目の大学生活のなかで、文学部の学問道の楽しさを再び味わいながら同時に、天職、生涯の伴侶、数えきれない出会いや縁と巡りあうことができ、今毎日がこんなにも楽しく幸せで、移住してからここまでの軌跡に何一つ悔いも不満もありません。また、納税力のまだまだ弱い一移民として、変わりゆくフィンランドの教育・社会システムのなかで、時に申し訳なく感じるほどの恩恵を受け、最後まで苦なく学業を続けられた環境にも本当に感謝しています。

学生という肩書がはずれた今、今後はこの国の良き納税者となることでその恩をきっちり返してゆきたいです。この国の過剰なほどの学生への投資と優遇は、まさにこの気持ちを持たせてくれるための社会制度なんだなあ…と、いま我が身で実感しています。(8月21日/一部加筆)
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マスター修了生のシンボルアイテムである月桂冠は、なんとこうしてパートナーの手で本物の枝葉から作ってもらいます。これが卒業式初日の儀式で、その後3日間にわたって、古いしきたりに則った儀式が次々に執り行われます。

もちろん今も、上に述べた気持ちはそのまま心に留めて、真に自立した生活へと移行を目指し試行錯誤をつづける最中です。何せ冒頭に述べたように、生活が落ち着き自分自身が一番冷静沈着になる秋がやってきたので、その日暮らしでつい面倒なことを先送りしてしまう日々の見直し、努力してもなかなかうまくいかないことへの対策、そのほかそろそろ真剣に考え動き出さねばならないこと、などなど、向き合うべき課題が次々に可視化してきてしまい、その都度うんざりもするし、ついついすべて投げ出し思考や身体を止めて休みたくなってしまいます。周囲も、少しでも私がそんな愚痴や弱音を吐こうものなら全力で「思い切ってしばらく休みなよ」と誘ってくださいます(笑)てか、前回のブログでも、今後は少しスピードを緩めて…とみずから公言してますね…。
でも、現実的にそういうわけにもいかずに今までの延長で走り続けようとしてしまう理由は、単純にまだそんなに疲れていないのと、動くのを止めたらここからの生活が立ちゆかなくなる怖さから、なんでしょうかね。生活=お金でもあり、キャリアでもあり、充実した日々でもあり…。

想定外のできごととか、不可抗力によってでないと、多分今後も自分のライフスタイルは自分でゆるめたり大きく改変したり、ということはできずに半自動運転でレール上を先に先に行ってしまうような気がしてしまいます。それが幸せなのか不幸せなのか、ちょっとよくわからない。「想定外」を待つが先か、みずから「不可抗力」を迎えるが先か…人生という旅路をてくてく歩きながら頭をかすめる悩みや思索に気を取られがちな今日このごろです。

ayana@jyväskylä.fi


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一時帰国までに、もう1回くらいブログを書けるように。



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2016年01月25日

涙なしに語れない卒業までの道のり(2)

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前回の続きのお話です。

「苦節4.5年、どうやらようやく、私のユヴァスキュラ大学院修士課程での修了・卒業が内定したらしい!!」

…いろいろワケありで自力だけで導いた修了とは言いがたいんだけど、それでも修了は修了ですっ(嬉涙)…という、その「ワケあり」部分の暴露日記の後半戦です。賄賂で単位を買ったとかそういうきな臭い話ではないので、ひょっとしたら今後フィンランドに正規学生として留学する方々の参考になる情報があるかもしれないし、後編は特に、世界に誇るフィンランド教育の特徴というか真髄が浮き彫りになったエピソードとも言えるので、そういう視点からでも「こんなことがあるのか…」と楽しんでいただけたら嬉しいです。
別に読み飛ばしていただいてもまーったく差し支えないのですが、一応まず前編(こちら)をご一読いただければ、ここまでのあらすじも追っかけることができますよ〜

*****
空前のフィン語作文アレルギー発祥で、どうにも残り2つのレポートに手をつけることができなくて、ドロップアウト(受講講座からだけでなく、大学院の修士課程そのものからの)を真剣に考え、離脱準備を進めていた冬休み。一番初めに心境を打ち明けていたミッコには、「レポートくらい、日本語でわかりやすく内容喋ってくれたら僕が全部翻訳して書いてあげるから…」となだめられ、でもさすがにサラリーマンに25ページのレポートのゴーストライターになってもらってまで卒業したいという気も全く無くて、丁重にお断りする日々。
大学友だちやオケ仲間にも、学食などで会ったときに少し話を聞いてもらったのですが、みんな「それなら全然無理する必要はないよ」と労ってくれながらも、「でもまだ在籍はしておいて時を待つのでもいいんじゃないかなあ。また突然やる気や体力が戻ってくるかもしれないし。」という、学費なし・手当の十分すぎる大学生ご身分を謳歌するフィンランド人ならではの見解がほとんど。ただ、何人かの友だちがそれとは別に、「フィンランドの大学はもちろん要件単位は細かく決まっているけれど、個々人のいろんな事情で、すでに取得した余剰単位の読み替え申請や、特別単位を出してもらうことだってできなくはないよ。だから結論を出す前に、まずはアマヌエンッシに相談に行くのがいいんじゃないかなあ」というアドバイスをくれました。

アマヌエンッシ(amanuenssi)というのは、大学の学部内の、さらに学科ごとに設置された教務部で、学生の単位や学位習得に関する監査やカウンセリングをしてくれる人のことです。個々の授業の単位認定は、もちろんその担当教官が処理を行ない、随時成績証明に反映されていきますが、アマヌエンッシは、学生が取得した単位の書き換えや読み替え、さらには新しい単位の「創出」までを司る、まさに神か閻魔大王か、という存在なのです。

単位の読み替えねえ…と、自分のこれまでの成績証明を眺めながらぼんやり思案にくれていたとき(これも前回書きましたが、私は必修科目の要件単位が足らないだけで、単位数自体はいろんな学科に浮気しながら要件数より20単位以上多く取ってあります…)、同じ街の別の大学(応用科学大学、以下JAMK)に通う友だちから耳寄り情報を得ました。少なくともJAMKでは、過去に通っていた大学なり専門学校で同類の授業を受けて単位を取ってる事を証明できたら、今の学校での取り直しは免除される…というもの。それ、ひょっとしてうちの大学でも認められるのかな…?だとすれば、私は日本の大学院でも今取りこぼしてる授業とタイトルだけ見ればほぼ同等の授業単位を取っているので、それを見せたら免除されるかも…

ということで、こんなこともあろうかと?移住前に母校で2部もらってきてあった英語版の修了証明と成績証明を引っ張り出してきて、そのスキャンデータとともに、アマヌエンッシのユハに嘆願のメールを書いてみました。「論文も出したし、卒業したいのは山々なのだけれど、もう自分の実力や体力に限界が来てしまいました。この過去の大学の取得単位の読み替えが認められないようなら、あとは大人しく中退の道を選びます…」と、本音としたたかさを全てさらけ出し…。
ユハからはなんと30分もしないうちに、長大なメールが返ってきました。しかもどうやらこの短時間に、しっかり私のこれまでの取得単位一覧を調べて、すぐに対策を検討してくれたみたい。ううう、さすが芸術学科生の誰もが「こんなにも仕事が迅速・敏腕なスタッフはフィンランドにそうそういない」と日頃から絶大な信頼を置く我らがアマヌエンッシ、ユハよ。。

しかもその返答には、

「(まず冒頭にここまで非母国語でしかも仕事と両立させながらよく頑張ってきたね、という泣かせてくれる労いの言葉が続いた後に、)悪いニュースと良いニュースがあるので、まずは悪い方から。残念ながら、うちの大学では過去の大学の修了要件単位として使った単位の読み替えは認められない。したがって、日本の大学で取った単位はここでは使えない。けれど良いニュースは、私は幸い必要数よりかなり多い単位を取得しているし、事実としては全大学で同等の内容を学習済みということはわかったので、取り残された10単位のうちの5単位分は、余剰単位で読み替えることは可能。さらに残りの5単位は、もし君がこれまで学業の傍らでフリーランスでやってきたという仕事が、『この大学の学科で学んだことを活かした職業である、あるいは仕事の成果が学業にも良い影響を与えてくれた』ということが客観的にわかるレポートを5ページくらい書いて僕を納得させることができたら、専門必修単位に読み替え可能な"job training単位"を5単位あげるけど、どう?」

…と、まさにこれまでの悩みや苦しみの煮詰まった鍋をかぱっとひっくり返してくれるかのような、画期的な救済案が提案されていたのでした。

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仕事と、学業。思えばこの数年の私の生活は、この二つの両立に苦しみもがいてばかりでしたね…。けれど、それぞれがスケジュール上で拮抗していただけかといえば、それは全然違う。私は文系や人文学部が役に立たないと軽視されることがずっと嫌だったし、そんなはずないという確信を持っていろいろじたばたしてきた末、今の仕事にたどり着きました。日本の文学部にいた時からも、絶対この学科に身をおいていたからこそ体験できたことや、出会えた人からの教えや、身についた思考力・文章力・アウトローであること恐れない度胸(笑)を武器に、社会のどこかしらで役に立ちながら、かつ絶対幸せな人生を送ってやると息巻いてきたし、その理想をこれからどうにか満たしていけそうな手応えも、今少しずつ蓄えられています。

どんな未知の世界を取材するときでも、娯楽番組をコーディネーションするときでも、誰かの何気ない言葉を通訳翻訳するときでも、人間らしい知性と温かさだけは、ぶれない軸として大切に保ち続けなければいけないと常々思っていて、その軸の芯部を形成してくれたのは、他でもない、O阪大学とJキュラ大学で書き続けたレポートであり論文であり、教授をくださった先生方であり同僚たちだったと、つくづく思います。もちろんそれに加えて、こんな超短期で私のフィンランド語をそれなりに使い物になるレヴェルに育て上げてくれた言語学部の先生方や、日々の先生であった大学の友だちへの感謝も計り知れません。

…とまあ、レポートではこんなアイドルの卒業スピーチ的な想いをそのまま書き綴ったわけではもちろんなく、これまで関わった取材やロケのプロジェクトのなかで、内容や取材プロセスにおいて人文学や芸術教育学の知識や考え方が応用された事例をいくつか紹介し、日本とフィンランドという異文化をまたいでメディア・コーディネーションやジャーナリズムの仕事に関わるうえでの気付きや諸問題を提議するような内容のものを提出しました。なぜか今回の作文作業だけはするするとはかどり、人生最後のレポートは、なんとたったの半日で仕上がってしました。あれ、5ページをこんなにさくっと書けたんなら本来のレポート2つくらいどうにかなったんじゃない?という疑念が自分でも一瞬よぎりましたが、まあこれは、大半が事業報告レポートという書きやすい内容だった上に、マラソンでゴールが見えてきたときにこそ発揮しうるラストスパ―トってやつだったんですよね、きっと(笑)

例によってユハからは30分とたたないうちにメールが返ってきて、「レポートすっごい面白かったよ!フィンランド人でも就職難の今の時代に、自分のバックグラウンドや能力が活かせる天職がみつかってよかったね!あとはこっちで単位処理しておくから、学位希求のオンライン手続きをして、シャンパン冷やして待っときな!」と、なんだか急展開に対しての彼のノリの軽さに、あららこれはひょっとして夢なんじゃないか…と、にわかに信じがたいような複雑な気持ちに。(ちなみにそんなユハの、大学HPに載せられたプロフィール写真はこちらですww入学当初はこんなパンクな人に自分の単位預けて大丈夫なのかと私も周りもみんなビビってましたが笑。)

ともあれ数時間後にはちゃんと大学から単位確定のオフィシャル通知メールが届いて、これにて、めでたく、ユヴァスキュラ大学修士過程修了が確定したのでした。

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今回の一連の対応やプロセスを経て、自分でもあらためて、単位って、大学での勉強って何なのだろう、ということを(最後の最後で)考えなおすきっかけを得ました。

少なくとも日本の大学では、大学外でのバイトや仕事の実績や頑張りが単位と互換されるということは考えられないし、担当教官が生徒個々人の事情をヒアリングして、自宅学習課題やレポート締め切り延長など単位取得のための代替案を提案したり、それぞれの単位を出す教官以外の人が、その学生の習熟度なり境遇を推し量って単位を創出・コントロールするという行為も、信じがたい目で見られることでしょう。

でも一方で、単位の価値の不公平性って日本のほうが顕著だったとも思うのです。うちの大学は、大学全体の傾向として「地中に埋まった単位を掘り起こさねきゃならない大学」と関西圏で揶揄されてたくらい単位には厳しい大学だったみたいですが、それでも入学したらまずどこかの専門サークルが作っている「講義情報(と名のつく、先生や教科による単位の"取れやすさ"を分析、可視化した一覧ノート)」を入手し、単位に甘い先生をターゲットに少しでも楽して単位を稼ごうとするのが普通でした。
こちらの大学では、どんな教科や担当教官であれ単位がもらえるまでの課題量やその難易度は、マニュアルもあるのではと察するくらい比較的均衡がとれていて、この先生だから単位が取りやすい、というのは聞いたことがありません。そもそも生徒も、単位の取れやすさよりは先生や授業の質の良さを確実に重視します。昨年度の授業の内容の評判を聞いて選択科目を選んだり、あるいは最初にその先生に「こんな授業を希望する」という要望を伝えたりするくらいです。
様々な事情で(たとえそれが「大学外での仕事が忙しくて…」であったとしても、)どうしても人並みに授業や単位取得プロセスについていけない人にたいする代替案も、それ相当の別課題を課したり、その時間で学ぶ内容の習熟度があるかを判定するのは絶対です。ですから、それらは「えこひいき」と言うのとは違います。

ただ、個々人が何かを学ぶそのプロセスやアプローチ方法には固執しない。その人にとって結果的に学ぶことがあったならそれでいいじゃない、という柔軟さが、フィンランドの(おそらく大学教育に限らず)教育現場での基本スタンスなのでしょう。単位は、その一つひとつの学びにたどり着いた証にすぎないもの。
ある目標地点への到達までの個々人の足並み(プロセス)をシステマチックに揃えさせるのは、ある意味簡単です。同じ現場に呼び寄せて、同じ説法を聞かせて、同じ課題を同じ時間にこなさせて、その最終結果だけを個別判定すれば良いのですからね。そのプロセスについてこられない人は、去る者追わず、自発的にドロップアウトしてもらえばいい、というスタンス。
一方、こちらの大学の先生達やユハがやってくれたように、一人ひとりの事情に耳を傾け、一緒に代替措置を考えて応じるというのは、当然ながら、その分だけ余計に考えるべきことが増えてしまうし時間も手間もかかります。でも、そういう個人的なケアまでを面倒がらずとことんやってくれるスタンスに救われ、やる気や学ぶチャンスを失わずにすむ学生はたくさんいるはずです。大学というのは、義務教育でもないし、最初の試験によっておよそ同等の能力を持った人たちが集って来る場なのでこの言葉がふさわしいかわかりませんが、大学教育の場においても、ごく自然にインクルーシブ教育の考え方が根付いている、というイメージでしょうか。
そもそもこちらの大学は、社会人を経て再入学する人もいれば、私のように仕事をする傍らで学位を取ろうとする人も多いので、学生一人ひとりの目的意識やニーズ、バックグラウンドにはかなりばらつきがあるのも事実。大学はまさに、そういう事情をカバーするインクルーシブ教育の実践の場となっているのかもしれません。

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もうひとつ私の事例からも特筆すべきなのが、大学側が、学生の大学外での職務体験に対して寛容であり、かつ大学での学びとワーキングライフ(や、大学以外での人生)との接点を肯定しフォローしてくれるスタンスです。特に日本の文系学部の場合、そもそも大学側が、学生がこの学科で学んだことを就職先で活かしてくれるはず…ということを端からあまり期待していない消極的なムードを感じます。どうしてもこの分野の研究を極めたければ修士・博士課程へ…でもいずれ就職する気ならできるだけ進学は考えるな。そして就活では大学での自分のフィールドに固執したり職務内容を選ばず、広く数多くやりなさい…という指導方針に乗せられます。社会が「不要だ不要だ」と口を叩く風潮に、実は文系学部自体も社会に果たす役割に自信をなくしている雰囲気があるのではないでしょうか。
実学的でない勉強をしてきた人が、その後の就職や人生に大学時代の実績やこだわりをまったく発揮できないというのはやはり寂しいことだし、大学の学科側が「結局世の中そういうもの」という雰囲気を否定しなかったら、ますます非実学叩きに歯止めが効かなくなりそうです。

私が今回行使してもらった"job training単位"というのは、規定として大学での専攻分野での勉強が活かせる仕事やジョブトレーニングに規定時間数以上従事したことを証明し、その意義を客観的にプレゼンできれば誰でも申請可能な単位らしいです。学業の一環そして職業訓練の一環として、自分自身で意義のある職を見出す、あるいは職に意義を見出す…という作業も、特にこういう学部だからこそ大切な経験やそのきっかけになるのでは、という気がします。人生に一貫性など別にいらないと思うけど、特に大学という、ある意味時間と心身を一番自由に贅沢に使え、知りたいことを心ゆくまで学べる特別な期間に、自分が何を身につけたのか、そしてそのおかげでこれからの人生をどう変えていけそうか。その動線を自分自身で確かめることで、さらにそれを大学側に認めてもらえることで、自分のこれまでとこれからに自信を持って、前向きに次のステップへと進んでいけるような気がします。

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学び方は、人それぞれ。学んだことの活かし方も、人それぞれ。
フィンランドでの大学生活の総括は、そこにつきます。
こんなふうに、人生でもう一度学生生活を過ごせたこと、それも日本では知り得なかった学生時代を謳歌できたことはとても幸せなことでした。長い人生、ひょっとしたらまたここに舞い戻ってくることもあるのかもしれませんが、ひとまずはここで一呼吸つき、ここからまた新しい道を歩き始めてみようと思います。
ま、ノマドワーカーにとって大学図書館ほど居心地よい場所もないので、しばらくは私の第二の作業場のままかな〜笑

今回だっと書き綴ったこと以外にも、「フィンランドの大学教育」について、実際に身をおいたり数々の視察のお手伝いをしてきた経験から書き留めておきたい事項って、実はまだまだあるので、一応夏までは学生証も有効だし(笑)、折にふれてそういうトピックも書いていきたいなあと思っています。

ちなみにここまでのBGMならぬバック・グラウンド・ピクチャーは、一応内容に沿って通学路の風景限定でお送りしました。肝心の学び舎がひとつも写ってないけど…

ayana@jyväskylä.fi


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ここまでの長文を完読してくださった方、本当にありがとうございます。
posted by こばやし あやな at 23:08| Comment(0) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月20日

涙なしに語れない卒業までの道のり(1)

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さて突然のご報告ですが、苦節4.5年、どうやらようやく、私のユヴァスキュラ大学院修士課程での修了・卒業が内定したみたいです!
ここに来てまで「どうやら」とか「したみたい」とか、さも他人事のような頼りない書き方をしているのは、フィニッシュの仕方が、自分でちゃんと人並みにすべての要件単位を揃えてこれみよがしにゴール!したのではなく、これまで取得した単位内訳では本来なら修了資格はないはずなのだけど、いろいろな裏事情や特例が絡みつつ最後は頭も下げてどうにかしていただいた、という感じだったからです…。別に、賄賂を渡して単位を買ったとかそういう不明瞭な事情ではないので(笑)、これが今後フィンランドに正規学生として留学する方々の参考になるかはわからないけれど、その始終をここに書きとどめておこうと思います。

まず、これは日記にも書きましたが、昨年末に修士論文は提出して受理され、40クレジットは取得済みでした。ただ普通は、まず最初の1,2年でそれ以外の必須単位を揃えておいて、それらの目処がついたタイミングで論文執筆にとりかかる、というのが一般的な流れです。日本の大学でも、そもそも卒業要件単位が揃っていないと修士論文は受け付けてもらえなかったと記憶しています。けれどこちらでは単位集めが修論提出の前提とはなっていないので、私は昨年度のスタート時点(9月)で本当はまだ15クレジット(半年のクラス3講座分)残っていたのですが、先々の人生計画も念頭に置いて、まずは論文作業を終わらせることにしました。

15クレジット足りないとは書いていますが、実は単位数だけで言えば、実は私はもはや修士過程の要件単位数をはるかに超過して保持しています。。フィンランド人とフィンランド語でのゼミで勉強するかたわら「第二外国語としてのフィンランド語」を副専攻として登録し、フィン語を母語としないけれど将来的に生活や仕事で積極的に使いたい人のための各種クラス(文章執筆とかリテラシーとかビジネスコミュニケーションとか)をいろいろ取っていたからです。さらにうちの大学の場合、基本的には主専攻と副専攻以外の学科の講座などを単位習得前提で受講するには事前に特別な登録をしたりと面倒はありますが、個人的に目的を明らかにして頼み込めば不可能ではありません。それをいいことに、私も音楽学科、ジャーナリズム学科、コミュニケーション学科などさまざまな分野の授業にも首をつっこんでいました。
ただ、私の主専攻はあくまで芸術教育学。ゼミの修士課程者用の上級科目から、少なくとも40単位分は稼いでいなければいけません。(参考までにフィンランドの大学の学士および修士課程の単位区分は、Y=yleisopinnot(一般教養), K=kieliopinnot(言語), P=perusopinnot(基礎), A=aineopinnot(専門), S=syventävät opinnot(専門上級)と分かれていて、修士課程はS単位を中心に集める)さらにその半分くらいは具体的な必修科目も指定されています。この細かな指定は「興味のあるものから幅広く」趣向の日本の文学部ではあまり聞かないですね。

私は、9月時点でこの専門単位があと10クレジットつまり2講座分不足してることはわかっていました。じゃああとの5クレジットは?…この辺が一番謎めいてる話で、私はいわゆる留学生のようにイングリッシュマスタープログラムに在籍しているわけでもないし、現地語履修なので扱いとしては正規扱いです。が、もしそうだとしたら第二公用語のスウェーデン語を履修していなければいけないし、留学生として見なしてもらうには、EU圏外の国籍を持つ学生に課されるフィン語の中級レベル取得や第二、三言語取得など、更にいろいろ特例が課される可能性もあるのです。
正直、このあたり大学文学部の芸術学専攻グループに前例がないことゆえ、教務に聞きに行っても返ってくる答えがバラバラ。私もまあいざとなれば、フィン語だって上級クラスを一通り履修しているんだしなんとかなるだろうと高をくくっていました。ただ、どうやらやっぱり整合性のために、もうひとクラス専門科目を多く履修することでカバーしてくださいという結論になったらしく、こうしてトータル3講座分の専門単位を取らなければならない、ということが昨年9月に判明しました。明らかな留学生用ゼミではない枠で留学する皆さんは、入学時点で、スウェ語などについては留学生扱いしてもらえるのかなど、教務にしっかり掛けあって正式回答を得ておくことをお勧めします…

ともあれ、しかたがないので昨年9月に残りの3教科を履修登録し、仕事と論文執筆の合間をどうにか縫ってきちんと出席もしたし、出張でどうにも出られない場合の代替課題も全て提出したし、中間発表などもちゃんと卒なくこなしました。ただ、文学部の講座の最終単位判定にファイナルテスト実施はめったになく、10〜15ページのレポートで成績がつけられることがほとんどです。もちろんそれまでの出席数や中間発表などは最終レポートの提出資格に響いてきますが。
講座の開講期間によりますが、多くの場合、秋学期のレポートの提出期限は年明け。私は3つのうち1つだけが年内で、あとが年明けとなっていました。

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閑話休題…最近ずっとシャレにならない寒い日が続いてる。毎日マイナス30度あたりをうろうろ。それでもこんな格好でなら外出歩いて自転車も乗れちゃいますよ、という捨て身の自撮り図。

さて、ようやくここからが「個人的な事情」発動の発端と経緯となるのですが…、これも以前論文執筆のことを記した日記で吐露しましたが、実は私は80ページを超える長大なフィン語論文の執筆課程で、何度も体調を崩しかけました。体調というか、それはもはや精神バランスの問題。曲がりなりにも物書きである自分が、仕事と論文を両立させるうち、つまりある時はフィン語思考モードで小難しい文章を書き、ある時は日本語モードで一般読者用の文章を書き…という作業を交互させているうち、自分の思考モードの切り替えがとっさにできなくなってパニックになりかけたり、自己表現が楽にできる日本語作文のあとで歯がゆさの連続であるフィン語作文に手を付けると、言いたいことがちゃんと表現できていない気がして、ものすごいストレスを感じるようになってきたのです。この精神の不衛生さは、如実に身体の不調にも現れ、正直かなり辛いものでした。昨年末は出張が多かったからまだ救われていたというか、ひとたび書き仕事から離れて日本語メインで仕事をするうちはすぐにけろっと良くなっていたので、原因は明らかでしたね(笑)

とにかくそんな状態で論文はどうにか出したものの、残る3つのレポート…総計枚数35ページだから、なんだかんだあの論文の半分近い枚数をまた書けってことでしょう…。正直、これに今手をつけるべきか、身体をいたわってもう一年見送るか(後期に同じのは開講されないので…)、悩みに悩んで、とりあえず年内締め切りのものだけは、うんうん苦しみながら書ききりました。もはや今論文書いていたとき以上にフィン語作文絶不調期にあることを再認識。もうダメだ、もうこれ以上無理して何か書こうとしたら、年明け早々再起不能になってしまう…と直感で危惧し、かといってこれによってまた進路が予期せぬ方向に進む(てか留まる)ことを考えるのもまた憂鬱で、結局、残り2つのレポート及び単位のことはいったん記憶の底に封じ込めて、年明け早々ありがたくも各方面からお声掛けいただいた仕事のほうに専念することにしました。

とはいえ、忘却の彼方に追いやって解決するわけでもない卒業問題…。実際自分の中ではある程度もう答えが出ていました「ここまでよく頑張ったし論文も良い成績をいただけたのだから、自分の限界を認めて大学を中退しよう」と。もちろんここフィンランドでは8年という上限はあれど大学の在学期間で人生に傷がつくこともないし、変な目で見られることもまったくないし、そもそも学費もかからないので困ることはとくにない。むしろ学生身分で、住居面や交通費面などいろいろ得してしまうのも事実。
ただ、自分でも予想外にワーキングライフが早く軌道に乗ってしまったこともあり、正直このままずるずる伸ばしても、来年もまた同じことを繰り返すだけのような気がして、それならすっぱりと潔く切り捨てたほうが、もっと身軽に次のステップに踏み出せる予感がするのです。
自分はこれまで一度もそんな選択はしたことがなかったけれど、世の先人いわく、世の中諦めも大事。Filosofian maisteriの称号だけなら既に日本でも取得しているんだし、少なくともこちらの大学のアーカイブに論文は残せたんだし、もういいじゃないか…。

と、一人その意思を固めて、大学の春学期が始まったらその旨を教務に伝えに行く気満々でいました。
が、それが周囲の方々からの思わぬ助言と援助により、わずか3日でまったくの別方向に転換してしまうことになったのです…

なんだかもう書く方もダレてきそうなくらいここまで長くなってしまったので、続きはまた明日(か次回パソコン前で自由時間を過ごせる時に)!(笑)

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2015年12月17日

己の努力の限界を知る

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上の写真は、スーパーのフィンレイソン・ムーミンファミリーバスタオル売り場で思わず二度見して隠し撮りまでしてしまった衝撃ワンシーン。。ただでさえ破廉恥な出で立ちのムーミンママのチラリズム(←まだこんな言葉あるのか?)を、さらにここまで恥じらいなく拡大トリミングし陳列するとは。ムーミンパパもこれには赤面しちゃいそう。。商魂たくましいと讃えるべきなのか、なんなのか…(全体像のデザインは左下のイラストです)

さて話は真面目なほうへ。昨日、ようやく、ユヴァスキュラ大学へ提出した修士論文の最終評価と、主査はじめ担当教官たちからの長〜い講評文を賜りまして、なんとうちの大学評定における、ちょっとレアな最高評価をいただいてしまいました!!あああっようやく報われた!!!
評定は、漠然とした総評というよりはいくつかの観点からの評価の総合値から与えられます。言語ハンディがある時点でまあどれだけ頑張っても到達点には限度があろうから、とにかく講評文で内容や論証だけでもそれなりに評価してもらえば良いや…という目標設定でこの半年余りあがいてきたので、さすがにこれは良い意味で意表を突かれた結果。正直、直後は「なあんだ、結局文章表現力は最初から目をつむったのね…」と穿った受け止め方をしそうになりましたが、この観点においての講評としては「多少筆者の母国語に成り立つ表現や論法が散見されるが、論文としての簡潔さや説得力の上では障壁になるものではなく、むしろ文章全体が生き生きと自分の言葉で語られていて良い」のだそうです(笑)さすがフィンランド教育の要、ポジティブシンキング〜!!非母国語の世界で「生き生きと」、という評価は、書き物やさんとしては素直に嬉しいですね。

あとは、(これは多少自信があったけど)きめ細かい論証と、一見シンプルな表象に対する洞察のオリジナリティや深さ(執念深さ?笑)が特に評価されたのと、一回目の主査からの講評会のあとに、言われたこと+自分でも気になっていたことをためらいなくがっつり修正・改良して、目次からして別物レベルの改良作を最終作とした点が(驚きを持って)好く受け止められたようです。記事でもレイアウトでも論文でも同じなのですが、一度自分で「こんなもんでいいだろう」と思って完成させて提出したものから、内心自身でもしっくり来ていなかった小さな違和感・矛盾を、ちまちま直して辻褄合わせようとするのは返って時間と労力を消費するやり方なので、私は好きではありません。昔はそうだったんですけどね…。既にあるものにしがみつかず、他者の意見やアドバイスを素直に聞きつつ、前作を大胆に覆して別物に作りなおす勇気と突貫工事力は、やはり編集者時代に得た一番の財産だと思っています。結局そっちのほうが時間がかからず、何より潔く割りきって新しさを追求できるので、最終的に、最初より絶対満足のいく、堂々とした成果に対峙できるものなのだと信じています。今回もこの方針に救われたと言えるかな。

さて、こうして「終わり良ければ…」な今だから、このフィン語での85ページに及ぶ論文執筆作業という人生の一大チャレンジをなんとでも呑気に振り返られるわけですが…笑

素直に吐露すれば、今回の論文執筆で、私は自分自身の「努力の限界点」を身を持って知りました。つまり、今後の人生では、何であれもう絶対に今回の論文以上に身の丈を越えたことを必死に頑張ることは止めよう、というストッパーとしての限界点です。理由は明快、今回以上に何かを頑張ったら、そのときは確実に体壊すから。大学一年生が、まもなく自分の酒の限界を身を持って知るように、私も今回ばかりは、途中何度も身体のきしみと訴えにはっきりと気づき、以前のブログに書いたようなあらゆる対処法の合わせ技で、まさに寸止めでどうにか最悪の事態を回避できました(ちなみに、自分の酒の限界はまだ知りません…記憶なくすどころか吐いたことも一度もないのでw)。たとえその先に大きな達成感や評価やキャリアをちらつかされても、もう後の人生でこんな無茶チャレンジはしないことを、ここに誓います(笑)私は二十歳すぎまで海外に出たこともなかった大和撫子なのだ。考えることは好きだけど、何も2つの言語文化に心身引き裂かれるような苦痛に見まわれながらなおも未熟な非母国語で思索したり長々文筆したりする必要も意味もなかろう…

とはいえ、フィン語で文学部の論文を一本書ききる、というのは、5年前に自分が自分に課した「フィンランドでこの先やって行くための判定課題」でした。自分は在フィンランド歴もフィン語歴も浅く裏付けになるような資格も何一つ持たずにフィンランドに乗り込んでいくんだから、せめてフィン語で論文一本書いて、それをキャリアにし、またそのプロセスを血肉として、それから現地ジャーナリストの道の未来を見極めよう、という思いで、大学院を受験したのは本当です。結果的に思いがけず早いタイミングで仕事のほうが先に軌道に乗ってしまい、大学の先生方には大いに迷惑をかけ続けてしまいました。それでも、とりわけ今回こんなにも身に余る最終評価を下してくださったパウリーン教授は、「外国人がここでやりたい仕事に就けるなんて本当に恵まれているんだから、(学業も仕事も)どちらも焦らず頑張りなさい」と、私がこれまでどれだけ仕事を言い訳に授業スキップしたりレポートの期限延長を懇願に行っても、ずっと笑顔で許して励ましてくださったのでした。また、ここまで長々論文提出を引き伸ばしても小言さえ言われず、生活に困窮することなく学びの機会を得られ続けたのも、ひとえに学生一人ひとりの多様性と将来性を受け止めてくれるフレキシブルなフィンランド大学教育の恩恵あってのこと。これらの恵まれた環境に加えて、ネイティブたちに混じってなぜか常にあくせくしている私の不可思議な奮闘ぶりに最後まで理解を示し支えてくれた恩師たちやゼミ仲間、オケや日本語サークルの友達などなど、月並みですがこの大学で出会ったすべての人のおかげで、人生最大のチャレンジをひとつクリアすることができました。もちろん一番大きく感謝したいのは、ときに私の心のなかまで覗いて(笑)いつもより良い表現を提案してくれる人生最高の専属ネイティブチェッカー、ミッコですよ〜。


…この流れで、「というわけで私こばやしあやなは間もなく大学を卒業し、長かった学生生活に幕を下ろします!」と宣言できれば良かったのですが…

論文はこうして無事に受理されたものの、斯く斯く然々な事情で、私はもう少しばかり、しがない大学院生を続けることになります…まあ、そのあたりのことは、真の卒業宣言のときに弁解させてください(笑)

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明日からは、今年最後のヘルシンキ出張!
posted by こばやし あやな at 05:39| Comment(3) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月13日

最終試練は暗号解読?

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こちら、先日近所の湖畔でとらえた逆さオーロラ。こんな絶景が手軽に楽しめる初冬もいいけれど、そろそろ湖も凍り始めて、雪も降り始めて、もう少し冬らしい気候に落ち着いてくれてもいいのにな。。なんていいつつ、実は今年も残すところあと50日にして、年内にはあと3往復、ラップランド出張が入っております(笑)先月の今頃論文執筆が一息ついて以来、自分でも鬱憤を晴らすように出張仕事をじゃかすか引き受け続けてしまった結果、もはや年内はクリスマスの義実家帰省も含めれば自宅にいる日のほうが少ないという有り様…食生活管理をしっかりしないとなあ。ひとまず明日からは先月に続いてエストニア再上陸、そして週末はそこから一気に北極圏へと飛びます(…が、実はまだ搭乗便やそもそも向かうべき街が定まっていないという…リアル桃鉄ワールドにをガタゴト奔走してる気分)。

…と実はその傍らで、昨日にようやく教授から論文初稿の査読が終わったからと部屋に呼ばれ、小一時間ミーティングを持ち、全体的な構成から細部の表現にわたるまでびっしりコメントと改善課題をもらってきました。母国での論文諮問のように後で泣き腫れるほどケチョンケチョンにダメ出しされるということはもちろんなく、非常に和やかで気楽なムードの中で、コーヒー片手に談笑交えて、という感じ。先生にはやはり、私のフィン語がノッてるときとそうでないときの文章レベルやテンション?の差による全体的ないびつさをきっちり見ぬかれていた上、しかもしょうもない文法ミスなどの訂正にまでわざわざ手こずらせてしまい、そりゃ返却までにこれだけ時間かかっても文句言えない…と反省しきり。でも議論内容や構成に対しては身に余る好反応をいただき、その点ではようやく報われた安堵感を得られました。それで最後に、先生が私の全論文の出力用紙に手書きで訂正や要最検討箇所を随時書き込んだものをワンセットいただき、これらを元に修正を終えて今月中には最終稿を出してね、ということなのですが…

先生の手記が、まったく読めない。

…まあこれって留学あるあるだとは思うんですが、ネイティブたちの書く手書き文字って、日本人の眼ではうんざりするくらい判読が大変なんですよね。これだけは、4年彼らの輪の中で勉学に励んでてても未だにまったくダメなまま。だけど、先生の走り書きは、正直これまでにらめっこしてきたどの人の文字よりも、推察すら働かない。。。これがなんだか、いろんな意味でちょっとショックだった…国内でも由緒ある学者家系の令嬢で、スウェーデン系ならではの整った顔立ちのうえすごく上品に美しく歳を重ねてらっしゃる、ただただ憧れウーマンだった先生の字が…字が……
どうにもわからないところに至っては、夫や友達に見せても、これぞという自信を持った答えをだれも導き出せない有り様。でもとにもかくにも、これら書かれた内容修正を解読し、きちんと反映して最終稿を完成させねばならないなんて…こりゃ最後の最後でまさかの大試練です(苦笑)今日もペーパーとにらめっこしてる時間が大半でなかなか進まず。明日もフィンランド人が酒盛りに明け暮れる陽気なフェリーの中で、もくもくと判読&論文修正作業、は免れなさそうです…
仕事も学業も、とにかく無事に乗り越えて穏やかなクリスマスと年越しに辿り着けることを祈りながら、ラストスパートですな。うむ、がんばろう。みなさんも、ラスト50日がんばって!

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おやすみなさい。

posted by こばやし あやな at 08:57| Comment(0) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月13日

移住後もっとも苦しかった一ヶ月

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もはや最近のブログ更新の枕詞となっておりますが、「皆さまご無沙汰しております」。

いきなりタイトルの内容に突入しますが、実はこの一ヶ月間、すなわちタンザニアから帰郷後から昨日までの日々は、初めて推進力&鈍感力だけが売りのこの私が心身ぽきっと折れる寸前まで苦しみもがくことになりました。なんとか寸止めですみましたけど(笑)

要因はただひとつ、修論のファイナルアプローチです。それに加えて出張こそなかったもののそこそこ大きな仕事の事始め、そして家では夫が同タイミングで仕事の山場を迎えていおり絶賛ストレス体積中で痛みを分かち合わねばならなかったことも大きかったか…(ということは、ぜんぜんひとつじゃありませんでしたw)
曲がりなりにも文学部提出用の論文なので、アウトプット以前にとにかく思考&推敲勝負です。当然、こんな長大な論文を一度日本語で書いてフィン語訳するわけではないので、そうなると頭で不可視的なことを思い巡らしたり、ロジックを考える作業も、やはり「全力フィン語モード」であることが強要されます。そして先生には、9月前半なんてタイミングで夏休み旅行に旅立つ代わりに、今日10月12日までに必ず初稿提出することを宣言していたので、帰国してからは、まさに一日の寝て起きてご飯作って食べて学校までチャリこいで…の時間以外のほとんどをパソコン前で費やさなければならなくなりました。
この負荷だらけの日常を続けていた結果…まず最初に異変が現れたのが、ある日から頚椎あたりから背中、そして両腕にかけて。そこら一帯の筋肉が、何かの激しい運動をしたかのように筋肉疲労を訴え始め、やがてがっちがちにこった状態で起き上がるのもしんどくなったんです、さらには長時間キーボードタイプ後に指先の神経がぴりぴりとしびれた感触まで残るようになって。

そりゃまあ運動不足とストレスとでこうなったと十分説明はつくんですが、精神的にかなり弱気になってた私は、もしや重大な病気の前兆なんじゃないか…(ちょうどこのころ川島なお美さんの訃報などもあり)と思い悩んでしまい、病院を予約しようとしました。ところが、フィンランドの病院は基本的に緊急性を訴える病状でない限りは、何週間何ヶ月先にしか病院(というか最初に行くべきヘルスセンター)の予約を入れてもらえないのです。そんなの無意味。そこでミッコに頼みネイティブパワーで症状&緊急性200%盛りで訴えてもらい、どうにか即日予約をとりつけました。まあ当然だけど、問診だけじゃ何がわかるわけでもなく。「とりあえず、ストレスと過労だと思うけど…」としか言ってくれないところに「もう金はいくらでも出すから血液検査でもレントゲン診断でもなんでもやってください!!」と嘆願し、どうにか血液検査だけはやってもらえることになりました。ただ、これがまた結果が出るのが10日待ちとかそんなので、しかも電話で判定結果を伝えてくるのみ。即日に詳細がばちっと出ていた日本の病院の優良さ、ちっとは見習っておくれよフィンランド…

結果的には、血液検査の結果がかかってくるまでにトライした、さまざまな病状自己改善&リハビリによって肉体的な各種症状はほぼ完治し、今更…なタイミングで言い渡された血液検査結果もとくに問題なさそうだったので、そのままになってるのですが、良いのかなあ。。。

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病状改善やリハビリというのは、単に毎朝登校前に早朝からあいている市民プールでひと泳ぎするようにしたのと、ミッコに紹介してもらった、街の武道場の一角に施術室を借りているスーパーマッサージ師ユルッキの上半身マッサージ(彼は間違いなくこれまで出会った中で最強のプロマッサージ師だと思う!おすすめ!!)、それからこれまたミッコの格闘仲間の理学療法士ニコに症状や姿勢などをチェックしてもらって処方してもらった個別ストレッチプログラムを続けているうちに、その後もパソコンに向う時間が減ったわけではないけれど、身体的な症状はどうにか抑えこむことができました。

だが、悪影響はそれだけでは終わらなかった。。。さっきお話したように、日中の大半の時間を「全力フィン語モード」で遣り繰りするうち、簡単に言うとアイデンティティ崩壊のような心理現象が起きてきたのです。。。

私、いうても日本語のもの書きが本職だし、家庭内も日本語優勢、お仕事でやりとりするお相手も半分が日本人、で、なんだかんだで思考回路もアウトプット法もぬるい日本語ベースの生活をずっとしてきたのに、論文作業以外のシーンでも気づけばフィン語でなんか一生懸命小難しい考えをまとめようとしてたり言葉を探していたりで、とにかく気が休まらないしイライラ。一番ひどいのが寝付く前で、暗室で目を閉じていたらどんどん非母国語の思考の波が押し寄せてきて、寝落ちする瞬間にハッとゆさぶり起こされるような錯覚が何度も。結局最近は日本語のラジオや音楽やバラエティの音を無理やりイヤホンで聞きながら眠りにつくようにしています。

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執筆作業自体はやっぱりなんだかんだで楽しいので(じゃなきゃ研究者になる気もないのに人生で二度も文学部の論文書くなんてマゾな道選ばんわな…)もうやめたい…とはどうしても思えず、いろいろな欲求や衝動やらに方方からを引きちぎられそうな肉体&精神状態のなかで、結局最後まで離脱の道に逸れることなく、ついに昨日どうにか初稿を書き上げ、今朝ぶじに教授に提出することができました。昨晩は、この瞬間の喜びのためにとその前日からフツフツ煮込み続けていたラム骨スープベースの自家製醤油ラーメンでお祝い!あいにく夫は週末からヘルシンキ出張だったので、ごめんよ〜と南に向かって叫んで、一人でずるずる。

まあ、こんな赤裸々に辛辣さをアピールしておきながらも、

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夕方や週末はせっせとキノコ狩りや別荘のような義実家邸に羽根を伸ばしに行ったり、

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先週の金曜日は地味に結婚一周年だったので、街のオサレレストランで贅沢ランチを食べたあと、披露宴を開いたお茶カフェを2人で来訪し、偶然お茶しに来ていた参列友達も交えてみんなで思い出話にふけったり。オーナーのアンネさんが、お茶菓子やフォーチューンクッキーを無料サービスしてくれただけでなく、帰りがけにサプライズで、一年前のパーティのときにお客さんに振る舞った日本の桜緑茶を一袋、メッセージシールつきでプレゼントしてくれたのでした…涙 イントロ写真はそのお茶と、瓶に指していたら見事にドライフラワーとなった、式の日にミッコが胸に指していたバラの花。確か本物は真紅色だったけど、いつの間にか紫のバラになっちゃいました…嗚呼ガラスの仮面!田辺誠一!!。。。ちなみに夫の最近のブームは、あの日以来ネット上に氾濫するさまざまな福山雅治の宣材写真の無造作キメ顔のモノマネです。顔の方向性が違いすぎるけど、妙に特徴を捉えてて、書き疲れたら「ちょっと雅治やってや」と訪ねていっては爆笑してプチ休憩していました。

それから、例のフィン全土オーロラ祭りの日は、ご近所さんたちとスキー場のてっぺんまでのぼって光の渦をみてはしゃいだり。。

とまあ、こんな感じで、「ストレスたまって参ってます…」と言ってもあまり信じてもらえないかもしれないくらいに、レクリエーション時間もとってはいました。
ただ、夏の後半からは涙を飲んでもろもろの帯同系のお仕事は自粛していたので、ようやく論文もかたがついたということで、明日からようやく本格仕事復帰、早速来週末まで連続2本立てで取材コーディネート業に行ってきます!!一本は一応海外出張、しかも夫との共同事業!あるものの「聖地」を求めてとある無名の片田舎に赴く…という、相変わらずわくわくする企画モノです。今年はなんだかんだで近隣国に出向く機会が多くて嬉しいなあ。

ちなみに論文の方はこうして初校を出して終わり。。。とはならず、このあと指導教官らのチェックとコメントを受けて再度書き直し、さらに最終バージョンを教授経由でUrkundというスウェーデンの盗作や著作権侵害発見システムに登録診断してもらって、問題がなければ大学に受理される…という経緯です。初校と正誤表出したら泣いても笑っても修正不可で地獄の口頭試問行き…だった日本の大学のときと、どっちがいいかと言われると難しい。。笑 まあとにかく、年内には受理されるよう、ちょっと外回り仕事でリフレッシュしたらまたもうひと頑張りします!

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明日はスーツケース転がして登校して授業でてからヘルシンキへ。。。

posted by こばやし あやな at 06:12| Comment(0) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月25日

もったいない精神を振り払え

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写真は二週間ほど前に潜入してきた、タンペレにあるフィンランド初の猫喫茶のワンシーン。猫ちゃんもたくさんいますが、インテリアもまたとことん猫なので、本物が置物たちに紛れてとろーんと微睡みはじめてしまうと、みごとに見分けがつかなくなってしまいます。つい先日はヘルシンキにも新たに猫喫茶がオープンしたようですね。最近は週末ごとにいろんな街に出かけたりもしているので、この日記初登場になる街の旅日記くらい書きのこしたいなあと思いつつ…。

今週は大学登校皆勤賞で、かなり論文執筆に集中できました。それでも目標枚数には到達せず、それどころか昨日まではずっと論旨の方向性に懐疑的になりながら無理に書き進めていたので、今日いったん頭のなかを整理してマインドマップを書きなおした上で、潔く消すべき部分は消して、書き直すべき部分は書き直して、順序の組み立てを変えるべきとこは変えて、その上でようやく少しずつ安心して先に進めるようになりました。
普段(特に字数制限のある)仕事の記事や日本語レポートなどを書く場合は、まずは分量の5倍は書いて、そこから推敲に推敲を重ねて余分をそぎ落とし、同時により伝わりやすい言葉に言い換えていく…というのが長年培ってきた自分のライティングスタイル。けれどやっぱり異国語での長文執筆では、まだまだ実力不足ゆえに、この手は使えない。。。単純に、悠長にそぎ落としたり言い回しを変えてみたり…というほどたっぷり迅速に文章を書くことがまだできないのです。それゆれに、なんとか書けた部分を後でばっさりカットしたり表現を変えることが、惜しくてどうしてもできない…。この文章書きなおすべきかなあと内心読めていても、頭にもったいないおばけがチラついてそそのかしてしまうのです。
でも昨日今日の教訓で、やっぱりそれでは結果的に自分を苦しめてしまうことを痛感。日本語のようにたっぷり書きだめて余分カット、までの余裕はなくとも、せめて、雲行きが怪しくなってきたらいったん手をとめてちゃんと見返して、ここは要らないな、書きなおしたほうがいいな、という頭の判断にはしっかり従うべきですね。

ところで今日は、身の回りのいろんな人たちから良いニュースを聞きました。大学時代の親友が予定日より一ヶ月早く産気づいてともあれ母子ともに健康に我が子を産んだとか、また別の友だちがフィンランドに遊びに来ることが決まったりとか…そんな一日の締めくくりに仰天させられたのは、昨年お仕事でご一緒させていただいた佐野研二郎さんの図案が東京五輪のエンブレムデザインに選ばれたというニュース!嗚呼なんと栄えある偉業…我々パランデル家は、年末の帰省時に東京で佐野さんに結婚祝い飲み会を開いていただいていたのですが、(もちろん知る由もありませんでしたが)その時にはすでに内定されていたのですね!!興奮するがままにミッコと急いで祝福のメッセージを用意。



今それでなくとも競技場のことで国内が混沌としているタイミングで、こんなに国民誰の目にも触れるものを発表した以上、この上ない誇り高さと同時にきっと賛否の波にもまれる大変さも待っていることは目に見えています。けれど胸を張っていつもの笑顔でい続けてください、佐野さん!私は少なくとも、パッと見て綺麗で無難で否を打つのは難しいけど(万人受けを最優先してる感じで…ごにょごにょ)という印象のあった招致時のデザインより、挑戦的に、でもポジティブかつ協調的にちゃんと次の時代に向かって前進していく、デザインとしてのクリエイティブさが感じられて好きです。クリエイティビティを与えられた我々人間は、どんなときも現状に満足して歩をとめてはいけない!昨日無事発売されたカウニステ本のインタビューの時にデザイナーのマッティ・ピックヤムサが語ってくれて、以来個人的にも心に留めていることがあって、「売れやすさ(好感度)」や「流行」最優先のデザインはやっぱりフェイクにしかならない。なぜならそこには、作り手の誠実なメッセージや思いや遊び心が欠けているから。今日の大量消費社会には実際あまりにそういったものがあふれているから、今回のように国や時代を代表する使命を持ったデザインは、うかつにその延長上で作ったり選んだりしてはいけないと強く思います。
きっとこれからずっとあちこちで目にするなかで、このシンボリックな色や形にどんどん新しいイメージや心地を喚起される人も多いんじゃないでしょうか。正直、(とりわけ本国離れて情報だけを頼りにしていると)東京五輪はなんやかんやで今前向きに士気を保つのが難しく思われるけど、佐野さんのあのポジティブでユーモラスで人思いなキャラクターとそれらを宿したデザインの力に明るい未来をけん引して欲しい!と、北の果てより強く願ってやみません。

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明日は久々に20度超えの予報ですって!!

posted by こばやし あやな at 05:13| Comment(0) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月16日

素直に苦しむもまた人生

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さっきギリギリセーフで来週の論文経過発表用の15ページレポートを書き上げてウェブフォルダに投函し、ようやく肩の位置がちょっとだけ下がって落ち着きました。ここ2週間ほど、久しぶりに自分の力不足に落ち込んでは、そのまま沈みゆく時間的余裕もなくただ悔しさをバネに無理やり跳び上がる勢いだけでもって、主に学業に向き合っていました。論文執筆作業は、今のところとても辛い。正直お仕事の書きものごときでスランプだの自信喪失だのといったことにはまずめったに陥らないけれど、論文になるとどうも日本の大学時代に教授たちから杭を打たれまくったときの苦しさというか、むしろそれに満足に応えられない学術フィールドでの自分の非力さが生む苦しみが蘇ってきて、早々と落胆したり萎縮したりしてしまう。
まして今回の異国語で読んで、調べて、考えて、伝えて、書く…という作業の中では、文章を書きだすことだけで必死で、論旨が明快に伝わっているのか、相手がこの一文一文をどう受け止めるかさえ、書いてる自分でもよくわからない。語彙も表現方法も、無理やり他者のを真似して増やしてみてもそれは今更自分のアイテムという感じにはならなくて、なんだか不自由でぎこちない。机に向かうたび、だんだん自我が崩壊しかけているようなきわどい感覚に陥りながら、それでも無心に前に進めていく。なんてしんどくて切ない作業…でも、ここで手を止めたら後々もっと重度の苦しみに見舞われそうだから、マシな方を選んで、前に進む。

そんなわけで、ユヴァスキュラに留学してきて一年目の冬に地味に苦しんだ、必死になるとついずっと歯を食いしばっちゃって顎が痛くなるシンドロームが久々に発症しています。普段あまりにあっけらかんとポジティブ&ノンストレスに生きてるので(お察しの通り時間的忙しさは全然苦にならない性分なので)、こういうたまの精神的プレッシャーをちゃんと受け止めて、ためになる試練そして成長の糧へと酵素分解していきたいとは思うのですが。もうこの受難の学業さえきちんと修めたら、余生は(笑)自分が本当にやりたいことだけを選択して生きていくつもりなので、最後くらいは多少無様な姿になってでも戦いつづけるのだ!イェーガーー!!

来週の経過発表自体は、原稿が仕上がったからにはもうどうにでもなると思うので、明日明後日は少し手を休めていたお仕事に(楽しんで)集中して、そして週末は久々にミッコの実家で大自然に癒され、サウナで芯までリラックスし脳と心をリセットしてきます♪緩急のバランスが取りやすいのが、なんといってもこの国での暮らしのいいところ。

ayana@jyväskylä.fi


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今晩は目覚ましをセットせずに眠りにおちようっと!

posted by こばやし あやな at 05:58| Comment(0) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月27日

怒涛の春の封切り

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年が明けて日本から帰ってきてというもの、スーパーマリオブラザーズの面を一面一面クリアしていくような感覚で(←わかりづらいですが、要は来る輩(雑魚キャラからボスキャラまで)逐一対処しながらスクロール画面にしたがって一日の終りを目指す感覚で、という意味です笑)、否応なしに一日一日が過ぎ去っていきます。

有限の時間と物事に追われることで、もちろんかつてのように思いつきで人を誘ったりふらりと何処かへ行ったり…という余暇は見つけづらくなりましたが、家で食べたいものをこだわって作る時間とサウナ時間は削がれてないので身体は常にぴんぴん。そもそも最近の私を追い立てるものごとが、昨年まで以上にやりがいを感じさせてくれる仕事・学業・音楽の三本柱なので、うまくいくかどうか…といった一時的な緊張感はあっても幸いストレスにはなりえません。
特に最近本格化してきたとある書籍のプロジェクトが、専門性とコミュニケーション能力がひときわ高い制作チームと取材協力者たちに恵まれているので、関連のデスク仕事に打ち込むたび楽しすぎてついついトランス状態で没頭してしまいます。こういう日々は生活圏が狭いので家はほとんど散らかりようがないのですが、デスクトップがフォルダアイコンの箱を豪快にぶちまけたみたいにドえらいことになってしまいますね。。。

実は明日からがある意味このマリオな日々の本番みたいなもので、今後しばらく週一ペースでヘルシンキに取材に通いながら、なぜか3月に集中した視察コーディネートのお仕事や論文のためのインタビュー、そしてコンサートおよびそのリハを一気に捌いてゆくことになる予定です。なんだか最近拍子抜けに気温があがって雪解けも始まっているし、手帳には明日の欄に「怒涛の春の訪れ」とネーミングをいれてあります。

というわけで、まともなブログ更新もまた当分できない気がするので、今晩はこのとおり最後まで一気にあれやこれやを書き散らしますので、ご容赦を。。。

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「音楽」部門で、まずまもなくやってくる大きな発散の日がこちら、以前にも少しだけ予告していたカルテットの単独コンサートです。オール・ジャパニーズアニメ&ゲームテーマ曲プログラム!!とにかく久しぶりの本格的なカルテットで、メンバーにも非常に恵まれているので、気合はものすごく入ってます。実際、最近の雑務の合間はほとんど前回の演奏の録音チェックや曲研究に費やしてるくらい(笑)アニソン自体は今回初めて本格的に踏み入れた領域だし、自分に備わったいわゆるクラシカルな弾き方では表現しきれない世界の面白さに、今更ながら奥深さに魅了されています。アンサンブル面でも、やはり音楽フィールドでの意見交換はフィン語に慣れているので、(今回ファーストは韓国人の子なので)英語でとっさに音楽の微細なニュアンスの違和感を伝えるのはやはり大変だから、語学の予習にも手を伸ばさないといけません。。。でもそんなことすらも、向上心の一言にがつんと背中を押され、突き動かされてしまいます。

コンサートの自主運営も久々で、いろんな担当者とコミュニケーションをとりながら、表からだけでなく裏からこつこつ組み立てていくプロセスがまた刺激的。今回、市の美術館がスポンサーになってくれたこともあり、市のウェブなどを通じて、そしてあとは我々で立ち上げたフェイスブックサイト(こちら)を介しての情報拡散に委ねる形で集客をしているのですが、すでに軽く100人を超える人から参加意志をいただいており、当事者たちも正直びっくりしています。建物内は200名くらいまでは入れるようですが、当日どれくらい空間がうまるか楽しみ!そりゃあお客さんは多いほどやる気出るからね。

ここでブログ読者限定?、できたてほやほやの予告動画をお見せしちゃいます。ラストに「Huomiseen!(明日お会いしましょう!)」と入っているように、本番前日にFBサイトに載せようかという意図で、休憩時間を使ってノリで音だけ録音して編集したものです。とはいえ、ユヴァスキュラ市民の皆さま以外には「明日お会いしましょう」もなにもないし、本番前日は確実に忙しくて宣伝日記も書けないので、いまここに一足早く置き残しておきます(笑)



お聞きの通りの「進撃の巨人」初代テーマは、背後で上映する実際のOPムービーにぴったりハメ込む一大チャレンジもはらんでいます。日本のジルベスターコンサートみたいに、指揮者がコントロールしてちょうど目標時間に終わらせてくれたら楽なのですが、我々指揮もいなければ弾いている間に背後の画面を見ることもできないので、とにかくミッコのドラムの安定感にゆだねながら、染み付いたアンサンブルだけでオリジナルテンポを貫いてみせます(笑)さあ、本番はどうなるかしら…??


まあこんな感じで、おかげさまでいわゆるリア充以外の何ものでもない日常を謳歌しています。家庭内は、最近はそれぞれに忙しくしながらも音楽セッションと料理(ごはんタイム)によって夫婦仲も取り持たれております。相方もいよいよ四月からのお仕事の本契約が交わされ(なんでもそのうちにさっそく日本訪問もあるとか…ウラヤマ!!)、先日はプチ祝いに牛テールシチューを煮込みました(←ネットで見つけたレシピに「記念日にピッタリ」とあったので)。シチューを確信犯的に大量につくったので、オムライスにかけたりドリアにしたりと、リサイクルメニューで昨日今日はちょっぴり楽してます(笑)リサイクルだろうがなんだろうが、ビーフシチューはどんな料理もすこし豪華に見せてしまうし、日がたつほど美味しくなる(気がする)からありがたや。

では、明日は(意外にも今年初の)ヘルシンキに、2件プレゼンのために赴いてまいります!上京の楽しみ、首都ランチの候補店は行きの列車でゆっくり探そう〜♡

ayana@jyväskylä.fi


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皆さまも如月最後のよい週末を!



posted by こばやし あやな at 07:11| Comment(0) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月18日

卒業旅行先は…

20150217_1.jpg

最近目先のことに忙しすぎて先を見通す余裕がないなあ…とふと思ったから。

というのは言い訳で、

修論が予定通り終わらないことが危惧され始めたので、何が何でもピリオドを設定するために。

というのも言い訳で、

ともかくただ安いチケットが出たから、という理由で、なんとはやくも卒業旅行のチケットを確約してしまいました。夏に休み返上で論文を出してしまう予定なので、9月の、シベリウス音楽祭のハイライトを聞いてから(←こちらもチケット予約済み。というかすでにすごい勢いでいい席から売れてしまっているので、行く予定の皆さんは今からでもチケットを押さえたほうが良いですよ)、そのまま飛び立ち10日間ばかりスオミを離れる予定です。

で、気になる行き先は、

タンザニア(とその周辺国?)に決定!!

フィンランドで出会った友達が今はタンザニアの大使館で働いているので、こんなツテでもないと行こうと思い立ちもしないアフリカへの初上陸を前々から決心していました。夫の妹の彼氏さんがタンザニア人で、その彼直伝のアフリカン音楽やダンスを夫が嗜んでいたり、彼の生まれ故郷の写真を見せてもらったことがあったりと、私にとって未知なるアフリカ大陸のなかではまだ遠くて近い国です。フィンランドからはもちろん直行便がなく、トランジットを含めれば片道だけでも日本フィンランド間を一往復できそうなくらい時間がかかるようですが、そんなふんだんなるムダ時間もまた贅沢と思い、端から端まで楽しんできたいです!

。。。と言ったって、半年以上先のお話ですから、ともかくはそれまでに論文と、そして抱えているお仕事やコンサートや、最近本格化してきた大きなプロジェクトをちゃんと一つ一つ形にすること。近視眼的にこの前につまっているスケジュールを消化してゆく日々の先に、9月なんてあっという間に見えてきそうな予感です。

ayana@jyväskylä.fi


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あ、写真は、ネタに困ったとき恒例のリッチ学食フォト(笑)今週はラム肉のワインソースがけですよ。



posted by こばやし あやな at 05:42| Comment(2) | 大学院生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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