2011年07月14日

「ヤコブへの手紙」ロケ地訪問

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さて、フィンランド国内ぐるり旅後編がいよいよスタート。
朝一番にヘルシンキ駅を出発し、中南部の都市タンペレの駅で一度荷物をあずけてから、ふたたび西部方面のローカル列車に乗り込んで、Vammala(ヴァンマラ)駅に向かいました。ヴァンマラは元々ここらの街の名前だったのですが、2年前の合併により現在はサスタマラ市の一部となっています。

この無名の街にやってきたのは、以前のカルサマキ訪問(こちら)と同様、どうしてもこの目で観たい教会ただひとつがそこにあったから。


フィンランドまたは映画好きなみなさんは、今年初めに日本でも公開されたフィン映画「ヤコブへの手紙」をご覧になったでしょうか。



(公式サイトの予告ムービーより)


観ていない方への映画紹介の代わりに、2月とは思えない暖かさのレディースデイの日の朝、銀座の映画館に観に足を運んだ当時の私が手帳に綴っている、感想の抜粋をここに引用しておきます(改めて読み返すと、ずいぶん偉そうでちゃっかり毒も吐いてますが…苦笑)。

私も含めまったく同一の瞬間から周囲の誰もが鼻をすすりさめざめ泣き始めたのが印象的だった。たぶん世界中の映画館で、おなじ現象がおこっているのだろう。余分なものをぜんぶ手放して、間違いなく心に響くものだけを残した、まるで北欧デザインそのものな作品。カウリスマキのような通奏的な「ほの暗さ」もあり、極めて正当派のフィンランド映画といえよう。(中略)ただ、邦題における「牧師」という単語の欠落にはいささか疑問。新約聖書の「ヤコブの手紙」に掛けてあるのはわかるが、実際は(パッピ ヤーコブ(ヤコブ牧師)」という)リズミカルで親しみやすい愛称が耳に残るので、あっさりヤコブと呼び捨てしまうと、ちょっと寂しく物足りないのでは。


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(メディア向けの公式宣材画像を流用しております。


ちなみに、主人公のヤーコブ牧師さんは、映画「Sibelius」で演じた晩年のシベリウス役も見事なはまり役だった、ヘイッキ・ノウシアイネン(Heikki Nousiainen)という高齢の名俳優さんが演じています。どちらの作品においても、「徐々に老いゆく人」の演技が実にリアリティがあって惹きつけられるので、「フィンランドの大滝秀治」と勝手に呼ばせてもらってるほど密かファンです。


さてさて、すっかり前置きがながくなりましたが…そしてすでに上の流用画像でネタバレしちゃっていますが、ヴァンマラ駅からてくてくと郊外のほうに歩き続けて向かったのは、ヤーコブ牧師がお務めをする教会の外観モデルとなった“Tyrvään Pyhän Olavin kirkko(トゥレヴァー聖オアフ教会)”のそびえる湖畔の地です。同じく映画内の教会内部でのシーンは、実はまったく別のちにある教会で撮影されているのですが、ともかくこの印象的な切り妻屋根のシルエットは、重要なシーンでなんどもスクリーンに映され、登場人物たちの心の機微を見守り続けていました。

実はこの教会のことは、映画のロケ地として脚光を浴びる以前からたまたま知っていました。
というのも、このフィンランド西部らしい中世の石造りの教会はもともと16世紀からそこに建つ歴史建造物だったのですが、15年ほど前に火事で全焼してしまい、その後2000年に、一念発起した地元の人々と、現代建築家やアーティストたちの協力のもとで、見事に木造リノベーションし蘇らせたことで話題になっていたからです。映画を見たとき、どうもどこかで見たことある教会だな…と思い、その日の帰宅後にフィンランド現代木造建築のカタログを繰って見比べてみたら、やっぱり!!というわけでした。なので、この教会は渡フィンしたら必ず見に来ようとそのときから決めていたのです。


看板に従ってしばらく車道の脇を歩き続けていると…


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カーブを曲がりきった先の視界一面に、突如、まっ黄色の菜の花畑が!!
3月生まれの私の名前にも一輪添えられた、日本の春の象徴花であるはずが…この時期に出会うのはやはり不思議な心地です。


そしてその菜の花畑をさらに進んでいくと、

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黄色い野の先に、聖オアフ教会の大きな三角屋根がいよいよ見えてきます。


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人をその天国に近い場所へと誘導する小道もまた、ため息がもれるほど清らかで平和的です。


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私がその地に到着したとき、概して晴れ渡っていた空が、どういうわけかこのアングルで見上げる箇所だけ、にわかに厚い雲に覆われてやや不穏な雰囲気を醸し出していました。奇しくもこの空の色は、ちょうど(上にも流用した)映画のイメージ画像そのもので、探せばその辺からヤーコブ牧師が現れるのではと思われたくらい。


まずはゆっくり外観を…と思っていたのですが、ちょうど到着後まもなく、3時開始の内部ガイダンスが始まろうとしていたので、先に内部をじっくりと見学させてもらいました(ガイダンスはフィン語のみだったのですが、惨敗でした、嗚呼。そもそも教会内でスピーカーの声が反響しすぎて何喋ってるのかさえも聞き取れなかった…)。


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カルサマキとはスタイルこそまったく異なりますが、ここもやはり、この国の伝統的な木造ドーム工法が応用されていて、新しいけど懐かしい、そんな落ち着きを感じることのできる空間でした。祭壇や壁のペインティングは、それぞれクーッティ・ラヴォネン(Kuutti Lavonen)とオスモ・ラウハラ(Osmo Rauhala)という2人の芸術家が手がけており、なかなか独特の世界観を生み出しています。


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ふたたび外に出てくると、先ほど上空に立ち込めていた雲は小さくちぎれて、澱みない真っ青な空にぷかぷかと呑気に浮かぶばかりでした。あたたかな陽の下で見ると教会の印象もまったく異なり、どちらかというと崇高さを剥いで、ただ純朴で牧歌的な雰囲気に満ちています。


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教会の裏手ではおっとりした羊たちが日向ぼっこに興じ、


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子供たちもまた、大自然のなかで闊達自在にはしゃいでいて、どこもかしこも長閑そのもの。

草むらにかがんで写真を撮っていたら、なんだか自分もその心地よさに身をうずめてしまいたくなり、カメラを裸のまま横たわらせてしばし野原でごろ寝〜っ


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湖畔の水音を聴きながら、足早に流れていくちぎれ雲を眺めていたら、あの切なくも穏やかな愛に満ち溢れていた映画がまた無性に観たくなってきました。ヘルシンキに帰ったら、DVDさがしにいこう。


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教会のそばには、地元作家の作品を集めた土産物屋を併設する小さなカフェもあって、ここにて定番のコーヒー&シナモンロールで一息。ちなみにクッションがわりに、ふかふかの羊さんの毛が椅子に敷いてありました。お一人でゆったりと経営されているお祖母さんも、この神聖な田舎の光景にぴったりはまった、無口だけれどとても味のある方でした。


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帰り道には、まさに映画中で郵便屋さんが「ヤコブー手紙だよ!」とベルを鳴らしながら自転車で走ってくるシーンが思い出される、白樺林の小径を見つけました。まあ本当にこの国のどこにだって見つかりそうな、ありふれた森の景色ではありますけども。


この街には他にもさまざまな教会が点在しているので、そのひとつひとつをじっくり見学したかったし、マーケットのほうにも行ってみたかったのですが、滞在時間が限られており、結局まさにこの教会のためだけに来た、という感じになってしまいました。それでも、丸一日大都市を高速観光する日よりずっと、ゆったりたっぷりと心が満たされています。また季節を変えて訪れたいお気に入りの場所がひとつ増えました。


最後に、もしこの街に来られるご予定の方には、ヴァンマラ駅前にある青い壁のレストラン“Liekoranta”のランチを強くオススメします!

フィンランド食堂の定番ランチ、スープランチ(パン・サラダ取り放題)で、6.3ユーロとごく標準価格ながら、ここまで食材も味付けも秀逸な大衆ランチに(失礼ながら)出会ったことはありません。サラダも種類豊富で、大概ただのハムで済まされるアラカルトも芳醇なローストビーフとレバパテで、もちろん取り放題!店内の雰囲気や店員さんの細やかなサービス精神も素晴らしく(トイレまで要注目!)、退店していく人だれもが、ただのキートス(ありがとう)ではなくそのグレードアップ形「キートクシア!」と言い残してゆくのも十分頷けました。カフェ営業もしているので、一日数本しかない電車の待ち時間など、機会があれば是非お立ち寄りくださいね。


Tyrvään Pyhän Olavin kirkko(概要英語)
http://www.sastamalanseurakunta.fi/pyhaolavi/english.shtml

Liekoranta
http://www.liekoranta.fi/homepage/

映画「ヤコブへの手紙」公式サイト(日本語)
http://www.alcine-terran.com/tegami/

ayana@sastamala.fi


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posted by こばやし あやな at 07:24| Comment(2) | Sastamala-サスタマラ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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