2011年07月03日

カヤーニのおぼえ書き

20110701_14.jpg

移動途中で立ち寄ったカヤーニの街をゆっくり歩けたのはほんの一日だけでしたが、その街歩きの途中で出会えた、些細だけれど心に留められたエピソードや印象などを少し書き残しておこうと思います。


街の中心には、アクロバットな姿が目を引く、フィンランド随一ともいわれる大きなネオ・ゴシックの木造教会が建っているのですが、その背後に広がるウルホ・ケッコネン公園(ケッコネンは、フィンランド第八代大統領)のさらに北側に、実はもうひとつ、ロシア正教の教会が佇んでいます。
ヘルシンキの港近くにあるウスペンスキー寺院というロシア正教の大聖堂はあまりに有名ですが、地理的・歴史的要因から、必然的に東方教会と西方教会の風が両側から一度に吹き込んでくることとなったこの国では、今でこそルーテル派が国教として定められているものの、やはり現在でも、あちこちの街でその両方が自然な住み分けをはかっている光景を目にします。

私が外観撮影をしていたら、すぐ横のベンチに座っていた赤いタンクトップの女性が近づいてきて、流暢な英語で「私が今ここの管理を任されているので、中を案内するわ」と声をかけてくれ、内部へと通してくださいました。ウスペンスキー寺院のように、金属や金箔がきらきら輝くディテールこそ少ないものの、やはり東方教会独特の、これでもかと多色で艶やかに聖人が描かれた空間は息を呑むものがあり、その瞬間、立っている現実世界がゆらいで此処ではない何処かへ導かれてゆくような感覚に陥ります。


一通り内部を鑑賞させてもらったあとに、先程の彼女が私にどこの国から?と声をかけてきたことから、しばらく二人で、この騒がしいような静謐なような、ともかく声だけは異様によく響く空間でおしゃべりしました。彼女はロシア人で、大人びて見えるけど私よりずっと年下。観光学を学びにこの街にやってきてもう三年目になるそうで、「じゃあもうフィン語もぺらぺらなの?」と尋ねたら、えぇもちろん、のあっさりした返事。

最近、もうやってきて三週間が経とうというのに、一向にある一線以降のヒアリング力も会話力も向上しないことで内心すっかり萎んでいたので、そんなことや、果てはまだ大学も将来の確固たる道も決まらない不安などを、気づけばついぐちぐちと彼女に漏らしてしまって…。

美しいグレーの瞳で鋭く眼前を見つめている彼女は、そんな湿った私に「フィン語はねえ、簡単よ。ロシア語よりずっと。」と、ちっとも嫌味ったらしくないふうに、さらりと言ってのけてくれました。思わず「一般的には、ヨーロッパで一番難しい言語っていわれてるけど?」って切り返したけど、そしたら彼女はガッツポーズをして「そんなの、毎日毎日練習あるのみ!」と一蹴。


毎日練習あるのみ。ほんとそのとおりで、それしかないんよねー。

わかってるのに、ちょっと疲れたりイライラしてくると、すぐ楽な道を探したくなったり、自分が出来ないことの矛先を変えたくなっちゃう。そこを自分自身の力で踏ん張れるか、諦めて手放しちゃうかが、分かれ目。「黙って継続」、これこそが、何かと焦りがちな今の自分の最重要課題であることを、その瞬間改めて心に誓うことができました。ありがとう、名前を聞きそびれたあのときの素敵なロシア人女性さん。


20110701_13.jpg

さて街の中心のマーケット広場では、このくっそ暑い炎天下の下、どう聴き入ろうにも爽やかさとは無縁のヘヴィメタ祭開催中…

この旅に出てきて、すでに何度この手のメタルイベントを目撃してきたことか。この業界にも当然上手い下手ってあるんやろけど、まだちょっとようわかりませんわ。かつて、ヘルシンキのヘヴィメタカラオケに連れてかれたときに、ちょっとだけ、ほんの一瞬やけど、楽しいかも…と思ったけど、その感覚のkeep in mindは無理やったわ。

てかさ、メタルやってる輩が、舞台上で堂々と扇風機で涼んでるってどーよ!?
確かにこのとき、外気計も余裕の30度超えしてる真夏日やったけどさ。自分らはそんな季節と時間帯を選んでみずからの爆音に浸ってるんやから、せめてその扇風機を客席に設置してあげりゃー、通行人もひょっとしたらちょっとは聞こうかという気になるやろうに。なーんとも妙な光景でした。


ちなみに、フィンの室内には冷房なるものがまずありません。外のお店だって、いわゆるエアコンの導入率は50%くらい。なのでエアコンのない家庭や店内では、しょうがなく扇風機が導入されています。去年は記録的猛暑だったので、あらゆるお店で扇風機の売り切れ続出現象が発生したとか。そして今年も…今週なんて、中北部を旅していても、日中は連日30度超してます。。。おいおい、この調子でまだこれから夏本番を迎えるなんて大丈夫なんか?朝夕は一気に涼しくなるのですが、その寒暖差がまた極端ゆえに、スーパー晴れ女といえども私の体も徐々に滅入り始めております…。そろそろ、1回くらい雨降ってくれないかな。


20110701_12.jpg

避暑をかねて、その広場からすぐの場所にあるカヤーニ美術館に行ってみました。2フロアに小さなギャラリーを何部屋かもつ程度の、常設展もないとてもこじんまりとした美術館なのですが。
このときは、国内作家数人による、木を使った作品に限定した展示会をやっていました。

なぜだか無性に心を掴まれたのが、写真の「Viimeinen Rakkaus(最後の愛)」という作品。

眼を閉じて、おそらくもう冷たくなっってしまっている子犬を、少女がやさしく抱きしめて頬をすり寄せている姿の木彫作品でした。
モチーフも題目もとてもストレートで、あまりに分かりやすすぎる地味な作品と評価されるかもしれませんが、木のくぐもった質感と、線描画のようにシンプルな彫り目とフォルムから、何故かその少女の心情の複雑さと冷静さの入り交じり具合がそのまま伝わってくる、とてもあたたかで切ない作品として一番心に残りました。
私としたことが、作品に見とれてすっかり作家さんの名前を控えるのを忘れてしまったのですが、覚えでは2002に満80歳で亡くなられた方による作品です。


20110701_11.jpg

午後に、いつものように勉強時間を兼ねたその街の図書館探訪に繰り出したのですが、この街のややはずれにある市民図書館は、なんと金曜日だけ午後4時閉館ということで、一時間もたたないうちに追い出されてしまいました…。

列車の時間までまだ2時間ほどあり、途方に暮れながらも駅に向かって川辺を歩いていたら、ちぎれた雲が水面にたくさん撒き散らされちゃったような、なんとも微笑ましい水景に出会えました。この場所のすぐ横には、かつてそこにあったというカヤーニ城の遺構がわずかだけれど残っていて、古ぼけた石垣に腰掛けながら、川の一期一会の景色を飽きるまで眺めていることができます。

図書館を追い出されたおかげでこの景色に出会えたんやから、ま、いっか、と、しばらくこの素敵な鏡面世界を眺めながら、ぼんやり日向ぼっこに興じたのが、豊かな思い出の一時になり替わりました。


20110701_15.jpg
 
最後に、VR(フィンの国鉄)のカヤーニ駅は、これまで立ち寄った数ある駅舎のなかでも、私の指折りのお気に入り駅となりました。

なかなか他所では見ないクラシカルな雰囲気が漂っているかと思えば、外観の柱の継ぎ目には、とてもさりげなくだけど子供が喜びそうなある動物の形をしたレリーフが彫られていたりだとか(現物はぜひいつか見に行って皆さんの目でお確かめください)、遊び心も散りばめられていて。


よく似た形をした椅子の横で時刻表置き場となっているのも、一見ただの棚かと思いきや、なんと無着色の木製ピアノ!

小さいけど、「さりげなく素敵」がたくさん見つかる楽しい駅なんです。


実は、朝に一度ここに来てトランクをロッカーにあずけようとしたとき、私がコインを投入したロッカーの鍵が壊れていたようで、鍵がかからないうちにお金が飲み込まれてしまったのです。困って駅員さんに助けを求めると、その女性のでっぷりした駅員さんは、自分のポケットから出したお金で二度もチャレンジして原因を確かめようとするも、惨敗。
私が、「あ、いいですよ、他のところに入れ直すので…」とことわると、「申し訳ないから、駅員室の私の足元で預かっといてあげるわ」との思わぬ返事。その方は、夕方に戻ってきたときもやっぱり切符売り場にじっと座っていて、私を見つけるなりにこっとしてトランクを出してきてくれました。

駅舎が駅舎だけに、人も人で素敵な駅でした。


20110701_16.jpg

そんな、小さな思い出をたくさん心にしまって、次なる街スケヴァへと向かう列車に乗り込みます。


ayana@kajaani.fi



にほんブログ村 海外生活ブログ フィンランド情報へ


怒涛の更新ラッシュ、まだまだ続きます。




posted by こばやし あやな at 22:37| Comment(0) | Kajaani-カヤーニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月01日

ずんずん横断中

20110701_1.jpg

カルサマキからまた東へと移動して、カヤーニという街までやってきました。

街の中心を太くたくましい川が流れている、しっとりとした街。
昨晩は思わず、お宿の前の川辺で少しだけ泳ぎました。

さて、この街の教会と図書館はどんなかなー?


そして今日の夕方からはようやく待望の列車移動が始まります。

ではでは取り急ぎ現在地報告まで。皆様たのしい週末を!


にほんブログ村 海外生活ブログ フィンランド情報へ


なんともう7月到来!


posted by こばやし あやな at 18:05| Comment(0) | Kajaani-カヤーニ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。