
今晩このあと眠りについているうちに時間が一時間早まり、明日からは早くもサマータイムが始まります。ただいま夜の8時過ぎでも西の空がぼんやりと明るいので、明日は夜9時でこんな感じ、という急な変化には毎年ながらなかなか慣れません。
先ほど夕刻、夕飯の支度に取り掛かっていると、西向きのキッチンの窓からなんとも柔和でなよらかな春の光が、包丁を動かす手元を照らすライトのように注がれてきました。皮の向けた玉ねぎは真珠のように活き活きと輝いていて。
ああ、この光の感じ、なんでこんなに懐かしいんだろう。そうか、日本の台所を夕方に照らしていた光とおんなじだ。緯度やサマータイムにさほど左右されない今にだけ、北半球およそどこでも等しく注がれる春の夕刻の陽の光。つかの間、ここが故郷から遠く離れた北の果てであることの緊張感を忘れて、久しく遠のいていたのどかで安らかな気分に包まれながら料理に没頭しました。たぶん明日はもう、同じ時間に料理を始めてもまだまぶしすぎてブラインドを下ろしてしまうのでしょう。さよなら、春時間。

ちなみに今晩のご飯は、きのこハンバーグ目玉焼きつきとブラッドオレンジ・サラダ。さっそく肉解禁です(笑)
ところでさっき近所の某外資系スーパーに買い出しに出向いたとき、前学期にとある授業で部分的に読んだ、Rosa Liksomという売れっ子作家さんの小説『Hytti nro6(寝台キャビン6号車)』が安売りワゴンに入っていたので、ぱっと買い物カゴに入れて持ち帰ってきました。2011年にフィンランド文学賞を受賞した作品で、シベリア鉄道の寝台列車でたまたま同じキャビンに居合わせることとなった少女とロシア人男との、「目的地到着までの期間限定の密室」でのやりとりが延々描かれています。私自身もまだ全部読んだわけでないのでどうだと語ることはできませんが、授業で少し立ち入ったこの小説の世界、彼女のインタビュー映像、ホームページの内容などから、「きっと私の心を揺るがしてくれる作家さんであり、作品だ」というドキドキするような予感がありました。心の孤独とは、一緒に重ねる時間の長さに囚われない忘れられない出会いとは、人間関係とは…そのあたりがおよそ主題となっています。
最近、以前にも書いたように電子書籍への依存度が高まりつつあって、どんどん気になる本をダウンロードしてしまう悪癖がつきつつあるので、ここらでひとまず日本語活字への依存症を断ち切って、フィン語作品のほうに身を寄せるようにしたいと思います。日本語みたくぱっと速読で読みきる心配もないので(笑)、ゆっくりのろのろと、しばし空き時間のお供になってもらいましょう。
ayana@jyväskylä.fi
損した気分にならないために、今日は一時間早く寝ないと。